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ブラジル最大の先住民族から高濃度の水銀検出 健康被害も確認


 南米ブラジルの政府系研究機関は、熱帯雨林アマゾンの奥地で暮らす先住民ヤノマミ族の人々の多くから高濃度の水銀が検出されたとの調査結果を明らかにした。背景には金の違法採掘の横行があると指摘し、健康被害が出ているとして改めて警鐘を鳴らした。

 ヤノマミ族の人口は2万7000人超で、ブラジル最大の先住民族といわれる。調査は北部ロライマ州の保護区にある九つの村を対象に2022年10月、保健省傘下の研究機関オズワルドクルス財団などが実施し、集計した結果を今月3日に公表した。

 調査では、子どもや高齢者を含む約300人から毛髪を採取し、水銀濃度を測定した。その結果、84%から世界保健機関(WHO)の安全基準を超える水銀が検出され、10・8%からはさらに高濃度の水銀が検出された。アマゾンに暮らす人々の主要なたんぱく源である魚のサンプルも水銀に汚染されていた。

 人々が被害を受けるのは、次のような流れだ。違法採掘者らは砂金を抽出する過程で水銀を使用する。川などに混入した水銀はバクテリアを介して有毒なメチル水銀に変わり、魚などに蓄積、それらを食べることで体内に取り込まれてしまう。

 ブラジルのアマゾンでは、かねて違法な金の採掘が問題となってきた。拍車がかかったのが、右派のボルソナロ前大統領が就任した19年以降だ。政権は環境保護を軽視し、取り締まり機関の予算を削って監視体制を弱体化させた。

 同じころ、金の取引価格が上昇し、違法な採掘者たちがヤノマミ族の保護区に殺到したとみられている。地元メディアによると、23年時点で保護区には少なくとも2万人の違法採掘者がいたと推定される。

 同財団は、調査の報告書で「特に子どもの疾病リスクが指数関数的に高まっている」と強調する。高濃度の水銀が検出された人々には、手足の神経に損傷が出るなどの健康被害が認められるという。

 違法な金の採掘を巡っては、アマゾンの保護を掲げて23年に就任したルラ大統領が軍や警察を動員して取り締まりを強化した。しかし、根絶にはほど遠い状況が続いている。【ニューヨーク中村聡也】

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