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局アナからスタートアップへ 福田典子さん、「ヒデ」の言葉を胸に


 テレビ東京の人気バラエティー「モヤモヤさまぁ~ず2(モヤさま)」で一躍有名になったアナウンサーの福田典子さん(33)。3月末で同局を退社し、4月1日から医療関係のスタートアップ企業に転職した。大好きなテレ東への思いや、キャリア作りについての考え方を、人生の節目に語ってもらった。

最初の移籍、直後の大抜てき

 大抜てきだった。福岡県のRKB毎日放送からテレビ東京に転職して間もない2016年。お笑い芸人「さまぁ~ず」の冠番組「モヤさま」のアシスタントを担当することになった。

 初代アシスタントの大江麻理子さん、2代目の狩野恵里さんというテレ東の看板アナウンサーたちに次ぐ3代目。他局から移籍したばかりの福田さんのようなアナウンサーにとっては異例の出来事だった。

 もともとスポーツ取材を熱望してテレ東に入った。五輪選手を追いかけたり、元米大リーガーの松井秀喜さんをインタビューするためにニューヨークまで飛んだりした。しかし結局、「モヤさま」が最も思い出深い経験の一つとなった。

 「『モヤさま』では、たくさん迷惑をかけて、泣いて……。やりたい仕事をさせてもらい、貴重な経験をたくさん積ませてもらいました。ホームタウンのような存在でした」と語る。

異業種への転職

 全国区の知名度を得て、順調にキャリアを積んできたが24年1月、スポーツ紙などでスタートアップ企業への転職を報じられた。福田さんは3月9日放送の「モヤさま」にゲスト出演した際、医療系スタートアップ企業の広報に転職することを報告した。

 毎日新聞のインタビューに応じた福田さんは、4月からメディカルテック「SCOグループ」の正社員兼フリーアナウンサーになると明かした。

 歯科医院向けのソフトウエア開発や決済サービスを手がけるスタートアップ企業だ。福田さんは広報としてインタビューを受けたり、企画運営に携わったりする。肩書は聞き慣れない「COC」。チーフ・オーラル・コミュニケーターの略で「口頭で伝達する筆頭責任者」の他に「口腔(こうくう)についての知識を伝達する」という意味も込められている。アナウンサーとしてのキャリアを意識したポストのようだ。

歯は何本ある?と問われ……

 「任務は歯の健康、予防診療の大切さを広く知ってもらうことです」と福田さん。もともと関心のある分野だったのだろうか。

 「実は詳しくなくて」と苦笑した。「社長に『歯は何本あるか知ってるか?』と聞かれた時、答えられなかったんです。自分の体のそんなことも知らなかったんだ、と思い知らされました」

 これまでの取材の中で、体調管理に余念のないアスリートたちを見てきていたし、自身も年を重ね、21年には出産を経験した。気づけば、身体をいたわるようになっており、健康への意識は年々高まっていた。

 企業の正社員として働く一方、フリーでアナウンサーの仕事も続ける。事務所に所属せず、仕事を受ける予定だ。歯科診療に関する仕事であれば同社の業務として認められ、それ以外の仕事も副業としてできるのだという。

子どもがいる生活

 福田さんは転職の理由をこう説明する。

 「子どもが生まれてから、自分のために使える時間がものすごく限られているのだと感じるようになりました。限られた時間を最大限生かしたいと思った時に、なんとなく、このままでいいのかなと思うようにも」。ヘルスケアに興味が湧いていたころでもあった。そんなときにSCOから声がかかったという。

ヒデはこう言った

 ライフステージに合った転職がかなった福田さん。とはいえ、局アナという華やかで安定したポジションを手放すことになった。「もったいない」と思わなかったのか。

 福田さんは「自分と同列に語るのもどうかと思いますが……」とためらいつつ、元サッカー日本代表の中田英寿さんとのエピソードを明かしてくれた。

 中田さんといえば、Jリーグ、イタリア、イングランドのチームで活躍し、ワールドカップ(W杯)で日本代表チームを引っ張った大スター。06年のW杯ドイツ大会中に29歳で突然、引退を表明した。

 福田さんは20年、その中田さんをインタビューしたことがあった。

 「若くして引退したことについて『もったいないと言われませんか』と尋ねたんです。そうしたら中田さん、『何がもったいないのかなと思いますね。重要なのは、自分がその環境が好きかどうか』と言っていて……」

 「その通りだな」と福田さんは感心させられた。「モヤさま」が順調だと誰もが思っていたころだが、福田さんは悩んでいたという。

エゴサしていた頃

 実は自信を持てずにいた。「周りからどう思われているのか気にして、エゴサ(ネットで自分の名前や情報を検索して、どう評価されているか探ること)までしていたんです」

 「モヤさま」先輩の狩野さんからは「福田らしくやればいいよ」と声を掛けられていたが、当時は意味をはきちがえていたという。

 「もっと自分を出していいと言ってくれていたのに、求められているだろうイメージに縛られていたところがありました」と振り返る。今では「自分の心の声に向き合えばいい」と思える。今からでも当時の自分に届けたい言葉だという。

応援してくれたテレ東仲間とさまぁ~ず

 退職の決意を上司や同僚たち、さまぁ~ずの2人に伝えると、背中を押してくれた。「『次も頑張れよ』とか『福田らしいね』と言っていただきました」とほほえむ。

 特別出演した3月9日放送の「モヤさま」のタイトルは「さようなら福田アナ! 練馬・江古田周辺でペクン散歩」。殻を破ったような、はじけるような笑顔の福田さんがいた。

 「退社しても、また番組に呼んでほしいです。(さまぁ~ずの)お二人は『フリーになったらギャラが発生するからなあ』と渋っていましたが……」

 照れくさそうに笑って、未来を見据えた。【大野友嘉子】

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