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「複合危機」克服へ議論、東京から声明発信に意義 言論NPO代表


 世界10カ国のシンクタンクの代表や政府高官らが一堂に会す「東京会議2024」が3月13~15日に開催された。ロシアによるウクライナ侵攻など国際社会が直面する危機について議論し、主要7カ国(G7)議長国のイタリア政府に向けて議長声明を発表した。主催した言論NPOの工藤泰志代表に議論を振り返ってもらった。

 ――今年の東京会議にはどのような問題意識で臨んだか。

 ◆今回は「多極化、分断化する世界で国際協力をどう回復するのか」というテーマで討論した。世界は今、ロシアのウクライナ侵攻、そしてパレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘という二つの戦争を止められない状況にある。食料・エネルギー価格の上昇に加え、従来対応の遅れが指摘される気候変動問題など、複合危機が続いている。

 私たちの問題意識は、世界がこれほどの危機に陥りながら、なぜ国際協力ができないかということだ。協力どころか亀裂は深まる一方で、これ自体が本当の危機ではないかとの視点で議論に臨んだ。

 ――亀裂が深まる要因は何だと考えるか。

 ◆最大の要因はグローバルサウスの動向だと考える。こうした国々は現在、紛争や気候変動などの影響をより大きく受けており、自国民の生存が脅かされ、未来を描くことができないことにいら立ちをつのらせている。米欧など先進国は複合危機に積極的に対応しているとは言えず、不信感は高まっている。

 同時に、ウクライナを侵略するロシアの国際法違反を非難してきた米欧諸国が、ガザについてはイスラエルを擁護する姿が国際社会には「ダブルスタンダード(二重基準)」にも映る。民主主義国の上から目線で「自分たちだけが正しい」という議論では、民主主義国は世界の信頼を失いかねない。

 ――国際政治の専門家らが参加した公開討論ではウクライナやガザ地区での戦争をどう終わらせるかという議論もあった。

 ◆ウクライナについては、現状は停戦をする局面か否かが論点になった。現状はそのタイミングではないとの意見が多く、今の停戦はロシアの勝利宣言に等しいとの声もあった。ただ、米国の支援の動向や戦局の行き詰まりが長期化するとの見通しから、停戦に向けた環境を整えるべきだとの意見も欧州の参加者から出た。

 注目されたのは「ロシアが困る状況を作り出し、ウクライナに有利な条件で戦争を終わらせなければならない」との議論だ。局面を変えるには米欧が軍事支援を続けつつ、北大西洋条約機構(NATO)への早期加入の議論も含め、ウクライナの安全保障体制をまず強化していくべきではないか、との意見だった。

 今の局面を変えないと停戦環境は整えられないとの苦悩を感じた。こうした環境を整えた上で、ロシアを停戦の議論に巻き込んでいかなければならない。

 ガザ情勢については、ガザの終戦とその後の統治が議論となった。討論では(イスラエルとパレスチナが共存する)「2国家解決」をこの地域の解決案とするかどうかが焦点になった。これに対しては国連も米国の現政権も支持しており、表立った反対はない。私は2国家解決が理想だと考えるが、参加者からはイスラエルとハマスの双方がこの案を歓迎しておらず「すぐには無理だ」との意見もあった。

 私が「2国家解決」を持ち出したのは長期的にはそれしか答えがないと思うからだ。東京会議に先立って実施した日本の有識者調査(441人が回答)では、ガザ地区の戦後統治の担い手を尋ねたところ(二つ回答)、「パレスチナ自治政府」(60%)と「国連」(48%)が突出する形となった。ガザについては、長期的なプロセスとして国連を含めた統治のあり方を、日本の有識者は支持している。

 ――会議の議論を受けて発表された議長声明には、どのような意味を込めたのか。

 ◆今回の会議では世界の亀裂に対し、私たち民主主義国のシンクタンクがどう向き合うのかが議論となった。私たちが目指しているのは、単なる課題の共有ではなく、議論を通じて解決の道を探ることだ。意見が全て一致したわけではないが、ルールベースの秩序を守るための努力で足並みはそろった。

 今回の議長声明には、最優先課題としてロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの戦闘終結を挙げており、G7がイスラエルとパレスチナの「2国家解決」を主導することや国連改革についても盛り込まれている。

 議長を務めた私が特にこだわったのは民主主義の「有用性」を高めるという文言だ。つまり日本を含めた民主主義の国は自国の民主統治の修復だけではなく、複合危機や紛争解決、人道支援に率先して取り組む。民主主義が世界の課題に役立つことを示し、その信頼で亀裂を修復できるという視点だ。

 この点は世界のシンクタンクも一致しており、声明は参加者から幅広く理解が得られた。こうした声明が、この危機の局面で東京から世界に発信されたことに大きな意義を感じている。

   ◇

 「東京会議2024」の議長声明は、言論NPOのウェブサイト(https://www.genron-npo.net/society/archives/18223.html)で全文が公開されている。

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