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フィリピン前政権に中国への譲歩疑惑 南シナ海問題で「密約」か


 フィリピンで、前政権が南シナ海の領有権問題で中国に譲歩する「密約」を結んでいた疑いが明らかになり、国民の間で反発が広がっている。「現状維持」が目的だったとされ、政府は前政権幹部に説明を求める方針だ。

 約束はドゥテルテ前大統領が在任中(2016~22年)、中国の習近平国家主席と口頭で交わしたとされる。ドゥテルテ氏の報道官だったロケ氏が3月末、地元メディアのインタビューで暴露した。

 それによると、フィリピンは軍事拠点としているアユンギン礁(英語名セカンドトーマス礁)などで、建造物の修繕や新設を行わない見返りとして、中国が食糧補給を容認する内容だった。同時にフィリピンは中国に対し、中国が軍事拠点化したミスチーフ礁に構造物を設置しないことを求めたという。

 アユンギン礁は、1999年にフィリピンが米軍の揚陸艦「シエラマドレ号」を意図的に座礁させ、軍事拠点とした。船は老朽化による沈没の可能性があるため、フィリピンは現在、修繕や他の構造物の設置を検討。中国が反発している。ロケ氏はこうした状況について「中国側が、今もこの申し合わせが有効だと考えているためかもしれない」と説明。「しかし、現政権が申し合わせを引き継ぐと中国側が推測するのは間違っている」と述べた。

 両国間の領有権問題は、フィリピンが仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)に提訴し、同裁判所は16年、南シナ海のほぼ全域に権益が及ぶとする中国の主張を退けた。

 中国は判決を無視して進出を続けたため、ドゥテルテ氏は経済関係を重視する観点から、中国に一定の譲歩をしていた。ただ22年に就任したマルコス大統領は方針を転換し、同問題に強い姿勢で臨んで日米などとの連携を強めている。

 ロケ氏は「『密約』ではなく、比外務省を通じて公表された」と釈明しているが、フィリピンの南シナ海国家対策本部の報道官は「中比間のいかなる『紳士協定』も知らない。あったとしても現政権は破棄する」と述べ、当時の外相に説明を求めている。

 当時の取り決めについてハーグでの裁判で比側法律チームに加わったアントニオ・カーピオ元最高裁判事は地元メディアで「判決で認められた比側の権利を放棄し、中国を利する行為だ」と批判した。地元メディアも「中国は、南シナ海における攻撃的な行動の正当化に利用しかねず、対立を激化させる」などと問題視している。

 アユンギン礁付近では3月5日に続いて23日にも、中国海警局の船が補給活動に向かっていた比側の船に放水銃を使用し、3人が負傷した。これを受け両国高官は25日、電話で抗議の応酬を繰り広げた。中国外務省の声明によると、陳暁東外務次官は「両国間関係は岐路にあり、フィリピン側は慎重に行動すべきだ」と強調したという。

 さらに中国側は、23日の補給活動の取材をしていたフィリピンメディアに対し「比側を被害者のように見せるために、動画を改ざんした」と非難し、比全国ジャーナリスト組合などが異例の反発声明を出した。

 マルコス氏は28日、自身のSNS(ネット交流サービス)で南シナ海における中国側の行動を「違法で危険な攻撃」とし、近く対応策を講じると投稿した。具体的な内容は明らかにしていないが、「いかなる国、とりわけ友人であると主張する国との対立は望まない。しかし、沈黙や降伏、服従もしない」と述べ、緊張は高まっている。【バンコク石山絵歩】

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