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ウクライナ関与説に市民ら「情報がない」 モスクワテロ1週間


 モスクワ近郊のコンサートホールで22日に起きた大規模テロから29日で1週間となった。ロシアのプーチン政権は「ウクライナや欧米が関与した」との主張を強固にしている。ウクライナで「特別軍事作戦」を続ける政権には、事件を奇貨として国民の結束を図りたい思惑もあるとみられる。

 露連邦捜査委員会は28日、事件と「ウクライナの民族主義者たち」を関係づける証拠が得られたと発表した。実行犯がウクライナ国内から多額の資金を受け取り、犯罪の準備に使用したとのデータが確認されたと主張している。ただ、詳細は明らかにしていない。

 事件では、29日までに実行犯とされる4人を含む約10人が拘束され、143人の死亡が確認された。実行犯として起訴された4人はいずれもイスラム教徒が多い旧ソ連・タジキスタンの出身だった。

 事件後に過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出し、事件の様子を撮影したとみられる動画も系列メディアで公開した。米政府はISが関与したと断定、ウクライナは自国の関与を全面否定している。だが、露政権内では、25日にプーチン大統領がウクライナ関与説を強く打ち出したのを皮切りに、側近の高官らからも同調する発言が続く。

 他方で、米ブルームバーグ通信は26日、露政権高官らは「ウクライナが関与した証拠はない」との見方で実は一致していると報じ、「プーチン氏が“悲劇”を利用して、国民を団結させようとしている」との関係者の話を伝えた。これに対し、露外務省のザハロワ情報局長は「全て偽情報だ」と反発し、27日の記者会見では「ISにモスクワでテロを起こす能力があるとは考えにくい」と主張した。

 イスラム過激派の単独犯行説に対しては、プーチン氏も25日、事件の対策会議で「イスラム過激派による犯行」としつつ、「中東の紛争に公正な解決策を示すロシアに対し、彼らが攻撃しようと思うだろうか」と疑義を呈し、「黒幕」の存在をほのめかした。だが、ロシアは2015年にシリア内戦へ介入し、空爆などでISを攻撃してきた経緯がある。欧米では、ISには今回のテロの動機があったとの見方が強い。

 一方のウクライナ関与説について、ロシアの在外・独立系メディア「メドゥーザ」は23日、事件関連の報道に関して、露大統領府の指図があったと報じた。国営メディアなどに「ウクライナの痕跡」を強調するよう指示したとのメディア関係者の話を報じている。

 また、「実行犯らがウクライナ国境を越えようとした」との露治安当局の主張について、ロシアの同盟国であるベラルーシのルカシェンコ大統領は26日、「実行犯らは当初、ベラルーシに向かおうとしていた」と言及。理由は不明だが、プーチン政権の論調に足並みをそろえなかった。

 真相を巡って情報が交錯する中、ロシアの市民の間では、政権の主張に同調する動きが広がっているわけでもないようだ。

 テロ現場となったモスクワの北西クラスノゴルスクの「クロクス・シティ・ホール」周辺では、事件から7日目を迎えた28日も、犠牲者を悼む人たちが献花し、祈りをささげていた。

 中部オレンブルクから来たというイスラム教徒の中年女性は「ロシアには大勢のイスラム教徒が暮らす。ウクライナがロシア国内の民族を分断しようとしている」と訴えた。ただ、追悼に訪れていた男女10人に話を聞いた限りでは、ウクライナ関与説に触れたのはこの女性だけだった。

 今回のテロの背後に何らかの謀略があると思うかを問うと、ほとんどの人が「判断できるだけの情報がない」などと答えるか、返答を避けた。妻と現場を訪れた中年男性は「恐怖しかない。当面、コンサートはもちろん、水族館に行くことさえ考えられない」と言葉少なに語った。【モスクワ山衛守剛】

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