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「ローカル線見直し急務」 新型コロナで赤字穴埋めの構図崩れ


 利用者の減少に歯止めがかからない過疎地の鉄路をどのように考えていくのか。その未来を占う、広島、岡山両県の山間部を走るJR芸備線の一部区間について、国やJR西日本、沿線自治体が存廃を話し合う「再構築協議会」の全国初の協議が26日、広島市内で始まった。

 「ガタン、ゴトン」。広島県北部の山あいにある庄原(しょうばら)市。1両編成で姿を見せたJR芸備線のディーゼル車が小さな集落や田畑を横目に進んでいく。

 存廃が話し合われる区間の備後庄原(庄原市)―備中神代(こうじろ)(岡山県新見市)は、中国山地を縫うように線路が走る。

 この区間は2019年度の輸送密度(1キロ当たりの1日平均利用者数)が48人で、JR西の赤字ローカル線の中でも特に利用が少ない。1日の運行本数も上下20本程度にとどまり、冬は雪の影響で運休になることが少なくない。

 かつては住民の生活に欠かせない公共交通の要だったが、周辺で中国自動車道や一般道の整備が進むと地域は「クルマ社会」に変わり、芸備線の利用客は減っている。人口減少に伴う過疎化も追い打ちをかける。

 備後庄原駅近くで生まれ育った西田学さん(59)は「通勤を含めてマイカーや高速バスを使う人が多い。廃線も視野に入れるJRの言い分も分からなくはない」と話す。

 現在は庄原市内の公立高校に通う生徒の利用が多いというが、この高校で実習教諭として働く堀内富夫さん(43)も「バスの便数が多く、通学に電車を使う生徒も減っている」と言う。

 一方、芸備線を巡っては22年、JR西日本が存廃を含めた協議を呼びかけたが、住民生活や地域振興などへの影響を懸念する沿線自治体側が応じなかった経緯もある。

「都市と地方、インフラ格差あってはならない」

 庄原市は今回協議のテーブルについたが、木山耕三市長は3月の定例記者会見で「都市と地方でインフラ格差があってはならない」と述べ、存続を求めていく方針を明かした。

 「ローカル線の見直しは急務になっている」。こう危機感を強めるのはJR西のある幹部だ。

 赤字路線の存廃議論は、新型コロナウイルス禍に伴う利用者の激減が引き金となって急浮上した。JRでは、新幹線や都市圏の在来線といった「ドル箱」がローカル線の赤字を穴埋めする構図が崩れた。

 JRグループで東海を除く5社の資料によると、22年度は在来線の68路線115区間で、輸送密度が1000人を下回る。

 JR西は21年3月期の連結決算で2332億円(最終損益)の赤字を計上。1987年の民営化以降、最大の赤字額を記録する中、同社管内で最も深刻な不採算路線とされる芸備線について、国に再構築協議会の設置を申請した。

 しかし、再編には沿線自治体の理解が不可欠で、議論の仕切り役を担う国土交通省の担当者の一人は「自治体側が反発した過去の経緯を考えると、一つ目から難しい案件だ」と語った。【安徳祐、井手千夏、道下寛子】

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