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“海ごみネイル”で県認定商品 「車椅子は難しい」ならばと起業


 神奈川県茅ケ崎市のネイルサロン代表、有本奈緒美さん(41)は、砂浜のプラスチックごみを材料の一部に使うネイルチップ(つけ爪)を考案し、「海ごみネイル」と名付けて販売している。華やかなつけ爪と「ごみ」を組み合わせるのは、おしゃれをしながら環境問題も考えてほしいから。今年1月には女性が開発した優れた商品を県が認定する「なでしこブランド2024」に選ばれた。「海ごみネイル」に込めた思いとは。【遠藤和行】

砂浜のプラごみ「新しいものに」

 ――「海ごみネイル」の作り方は。

 ◆湘南の砂浜清掃で拾ったごみで5センチ大から極小のプラスチック片を選びます。洗浄し、乾燥させて細かくカット。それを直径5~6ミリの円形やひし形の枠に入れて加熱して溶かすと、海ごみのパーツができます。あらかじめ爪用化粧品で装飾したネイルチップに載せ、「トップジェル」という光沢の出る液でコーティングして固定します。専用の両面テープで爪につけるので着脱可能です。オーダーメードで、両手のセットで平均1万5000円です。

 ――なぜ海のごみを使うように。

 ◆約3年前に、湘南のビーチクリーン活動に携わる人から、座ってできるごみ拾いを教えてもらいました。自分の周りの砂をふるいにかけてごみを拾う方法です。実際に1時間で両手いっぱいになり、驚きました。持ち帰って捨てようとしましたが、「また海に戻るかもしれない」と捨てられず、新しいものに再生させようと思いました。ネイルなら生活の中で目にする機会が多く、環境問題を気にかけてモノを大切にすることにつながるのでは、と作り始めました。

 ――ネイルの仕事をするきっかけは。

 ◆ネイルサロンを開店したのは約6年前です。もともとは特別養護老人ホームなどで福祉の仕事をしていました。県内の障害者支援施設で職業指導員だった2014年に、脊髄(せきずい)の進行性の難病が見つかりました。歩けなくなって退職し、障害者手帳を取得。手は将来も動くとの診断でしたので、趣味でネイルの勉強を始めました。

 車椅子生活になり、一時は障害者雇用で就職しましたが、上司に障害についてうまく理解してもらえず、1年で退職。再度、ハローワークで求人を探しても障害者雇用は少なく、あっても給料が低いのです。気分転換にネイルサロンに行こうとすると、「車椅子では難しい」と断られました。就職もおしゃれもできないことが悔しく、「ならば自分で始めよう」と、約1年の準備を経て18年7月に開業しました。

 ――どのように営業を。

 ◆友人の口コミで少しずつ知ってもらい、その過程で「海ごみネイル」に取り組みました。そしてその作り方や販売方法を習得するビジネスプランをまとめ、22年に民間コンテスト「女性起業チャレンジ大賞」に応募したところ上位の賞を獲得できました。広く知られ、注文が安定するようになりました。

 ――難病になって気づいたことは。

 ◆障害者の給料が低いことです。私が勤務した障害者支援施設はボルトにネジを付ける仕事でしたが、障害者の工賃は1カ月1万円程度でした。障害者の仕事や作品という理由で価格が低く設定されがちだと思います。作り手が障害者かどうかにかかわらず、作品を評価してほしい。そして障害のある人で「海ごみネイル」に関心があってアートが好きな人がいれば、私のノウハウを伝えるので一緒に仕事がしたい。今は個人事業主ですが、早く株式会社を設立したいと思っています。

 ――「早く」と急ぐのは。

 ◆私の病気は痛みやしびれ、しゃく熱感が365日あります。両脚だけだったまひが、最近、左手にも出てきて、いつ細かな作業ができなくなるのだろう、と不安があります。自分の仕事の基盤をしっかりさせ、1人でも多くの障害のある方と仕事をしたい。そのためにも株式会社にするのが当面の目標です。

ありもと・なおみ

 1982年、横浜市生まれ。ネイルサロン「Plumeria Nail」(プルメリアネイル)代表。2014年、脊髄に進行性の難病が見つかる。18年、自宅にネイルサロンをオープンし、22年には障害者向けにネイル技術のオンラインスクールも始める。地元小中学校で福祉講話などの講演活動も。23年11月から毎月第2土曜に仲間と地元の砂浜でごみ拾いをしている。夫と息子1人、娘2人の5人家族。

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