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プラモデル作って、うつ病脱出 「模型の世界首都」静岡の挑戦


 プラモデルを作ってうつ病から抜け出そう――。静岡市の市立精神保健福祉施設「こころの健康センター」が2月、長期にわたってうつ病に悩む患者の回復プログラムにプラモデル製作を導入した。同市は「タミヤ」など主要メーカーが本社を構え、出荷額で国内8割以上のシェアを誇る。「模型の世界首都」をうたうこの街で始まった取り組みのきっかけは、施設のトップが着目した、プラモデルのある特性だった。

「あらゆる感覚を刺激」

 今回の取り組みが始まったきっかけは、精神科医の大久保聡子所長が2023年9月に参加した、市役所職員有志の夜間勉強会だった。その日の講師はプラモデル作りを趣味にしている田中一成・同市保健所長。テーマはプラモデル作りだった。

 組み立てに初挑戦した大久保所長は「部品を切り取る音、ちくちくした感触、塗料の鮮やかな色、あらゆる感覚を刺激された」。時間や周りの騒がしさを忘れるほど作業に没入したという。

 「意図せずとも集中してしまうのがプラモデルの特性だ。もしかして、うつ病からの回復に生かせるのではないか」。そのひらめきには裏付けもあった。

今、この瞬間に集中

 こころの健康センターの回復プログラムの基本となっている「認知行動療法」には、過去の失敗や未来への不安で頭がいっぱいにならないよう「今、ここにいる自分に集中する」という方法がある。禅の瞑想(めいそう)などから生まれた「マインドフルネス」にもつながる療法だ。

 同時にセンターでは「元気だから行動するのではなく、まず行動する。やっているうちに元気になり、外出したり人と交流したりする意欲も出てくる」という「行動活性化療法」の手法も取り入れている。

 「プラモデルはいずれにも当てはまる」と考えた大久保所長は、センターでもうつ病患者を対象にプラモデル作りの講師をお願いしたいと田中所長に依頼。2月9日と16日の回復プログラムで初めての製作実習が行われた。

 参加したのは計7人。2日間とも約2時間半かけてアニメ「ゆるキャン△」のミニジオラマ作りに挑戦し、キャラクターのフィギュアやアウトドアチェア、自転車などを細かい作業で組み立て、色付けしていった。協力し合って共同で作品を完成させた参加者もいた。

参加者の受け止めは上々

 製作中の自分の様子を事後アンケートで尋ねると、「とても集中した」が5人、残る2人も「ある程度集中した」。「作業に集中することで余計なことを考えなくて済み、良かった」との感想もあり、参加者の受け止めは上々だ。同センターは4月以降も製作実習を継続することを決めた。

 講師を務めた田中所長は厚生労働省の医系技官を長年務めた61歳。「40歳のころ、オンとオフを切り替える必要を感じてプラモデル作りを始め、とても役立ってきた」。「本業」とは少しずれるが、回復プログラムでの講師役は今後も続ける予定だ。

 「プラモデルが万人に効くとまでは言わないが、『のめり込めた人』には期待できる。好みは人それぞれでも、静岡にはあらゆる種類がそろう環境がある」。田中所長は「プラモデルの街ならではの方法でうつ病患者の力になっていきたい」との思いを強めている。

【丹野恒一】

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