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震災画家が描く能登半島 「100年先に伝える」絵に込めた希望


 東日本大震災(2011年)や熊本地震(16年)で被災地の様子をカンバスに残してきた岩手県奥州市の震災画家、鈴木誠さん(51)が、能登半島地震でも絵筆を握った。焼け焦げた市街地、津波にのまれた集落、隆起した港――。鈴木さんは「50年、100年先に伝えることが、今を生きる人の使命。写真や映像ではなく、絵だからこそできることもある」と力を込める。

 東日本大震災をきっかけに被災地を描き始めた。画家の丸木位里(いり)(1901~95年)、俊(とし)(12~00年)夫妻が制作した「原爆の図」や江戸時代の飢饉(ききん)の様子を描いた絵図など、天災や戦争を記録するメディアとして絵画はたびたび用いられてきた。未曽有の災害を前に「自分が後世に残せるものは何か」と自問し、たどり着いたのが得意の絵だった。

 11年5月から被災地で絵を描き、勤めていたデザイン会社を退職して創作に打ち込んだ。復興過程も含めて描いた絵はこれまでに174枚。熊本地震でも41枚を描き、全国各地で展覧会を開いた。

 1月下旬から10日間ほど能登半島に入り、石川県輪島市の火災やビルの倒壊、能登町の津波などの現場を訪れた。「4メートルの隆起は、明治期の濃尾地震のようで恐ろしさを感じた。東日本大震災と熊本を合わせたようだ」と、複合的な被害に驚く。

 こだわっているのが、現場で絵を仕上げることだ。比較的短時間で記録できる写真や映像と違い、絵は対象物と長時間向き合う。被災者らと会話を交わしながら、ここでどんなことがあったのか、住人はどうなったのか、などと想像を巡らせる。被災者から「(トラウマで)写真や映像は見られないけど、絵なら大丈夫」と言われることも。「自分の中にいったん取り込んで、それを画面に再構成するので自然と被災地に寄り添ったものになるのでは」と絵の持つ力を実感する。

 2月9日に描いた同県珠洲(すず)市の観光名所、見附島(みつけじま)の風景は、地割れや島が崩れかけた様子など、生々しい地震の被害を描き込みつつも、島を夜明けの淡い光で包んだ。「今はどん底かもしれないが、夜明けは復興に向けて人々が動き始める時間」と、自身の希望も込めた。

 今回の旅で描いた絵はスケッチを含め計18枚。今後も能登半島を訪れて復興の過程を見続けるつもりだ。「将来、この絵を見た人が、かつて能登でこういう災害があり、こう復興していったということを思い出し、災害に備えるきっかけになってほしい」【阿部弘賢】

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