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冬眠するはずのクマ、なぜ出没? 出合った時に身を守る方法とは


 この冬、クマの出没が各地で相次いでいる。本来は食欲の秋にたっぷり脂肪を付けて、エサが少なく寒い冬場にぐっすり冬眠するのがクマたちの生活スタイル。それなのに、クマたちはなぜ眠らないのか? 出合ってしまった時の対処は? 野生動物の生態に詳しい福島大の望月翔太准教授(39)に尋ねた。【聞き手・岩間理紀】

 ――本来は冬眠するはずのクマが、この季節にどうして出没するのでしょうか。

 暖冬で雪が少ないというのが一つのポイントだと考えている。雪が降らないと、ずっと餌を探し続けるクマが一定数現れる。加えて、昨秋はクマの餌になるブナの実が凶作で、場所によってはドングリが実る地域もあったが、クマ同士の争いでそうした地域から追い出された一部の力の弱いメスや子供などが脂肪を蓄えることができず、餌を求めてさまよい続けているのが現在の傾向だと思う。人里近くに出てきたクマが人里近くで出産することで生まれ、“ホーム”が山ではなく人里になった「新世代クマ」も増えており、人との接触が増えることに懸念を持っている。

 ――他にも、クマが冬眠をしない理由は考えられますか。

 近年の状況として、猟友会などが駆除する際に親子の親グマだけを駆除してしまい、まだ冬眠を経験していない子グマだけが生き残るケースがある。子グマはまだ冬眠の仕方や、どこで冬眠すればいいかを母グマから学んでおらず、市街地に出てきてしまうことも。1月に岩手県北上市のショッピングセンターに子グマが現れてニュースにもなったが、この事例も同様の原因が考えられる。これを防ぐためには、地域として合意形成した上で、例えば親グマが捕まり周りに子グマがいるとの情報があった時には、殺処分するのではなく、学習放獣(捕まったクマにその場所や人間を怖いと学習させて放つ)をする選択肢があってもよい。

 ――「冬眠しないクマは危険」とも聞いたことがありますが、実際はどうでしょうか。

 冬眠しない「穴持たず」と呼ばれるクマは、生活パターンが崩れたことでストレスを抱え、餌にもありつけず興奮状態になっている。通常、クマは人間が怖いので人と遭遇すると逃げ出すが、餌を食べたいがゆえに人が餌を奪いにくる存在だと誤って認識し、人を襲ってでも餌を確保しようと攻撃してくることもある。特に注意が必要だと言われている。

 ――クマ被害を避けるためには、どんな取り組みが必要ですか。

 意識しなければならないのが、これまではクマが出没しなかった「こんなところで」という場所でも遭遇する可能性が高まっているのだということ。例えば福島県では浜通りといった阿武隈山地の東側にはクマは出ないと言われてきたが、今は違う。クマたちの分布も変わりつつあり、人口減少で耕作放棄地や手入れされていないヤブなどが増えて、人里と山との境界もなくなりつつある。こうした状況は今後も進んでいく。「常にクマ鈴を持ち歩こう」といった「自助」としての個人の意識付けに加えて、放置されている柿の木を切ったり、通学路を整備して隠れ場所になるヤブを刈ったり、対策を地域の「共助」に広げていくことが重要だ。マンパワーも限られているので、優先順位を付けて。(人気漫画・アニメの)「進撃の巨人」ではないが、既に壁は壊れ、動物たちは市街地にも侵入し始めている。「自分ごと」として捉え、対策に取り組むことが大切になる。

 ――今年度の人身被害は過去最悪で、環境省は4月にも国が捕獲費用の一部を負担する「指定管理鳥獣」にクマを追加すると表明しました。クマと人との接触が増えている中、出合ってしまった時にはどのように対処すればよいでしょうか。

 クマとある程度の距離がある場合には、焦らず目線を合わせながらゆっくりと後ずさり、建物や車の中などがあれば中に避難してほしい。もしも至近距離で鉢合わせしてしまったら、命を守ることを最優先に。撃退スプレーが手元にある場合などを除いて、重要になるのが「死んだふり」、つまりは「防御姿勢」だ。急所を守るために地面にうつぶせになり、首の後ろで手を組んで頭の周辺を守る。リュックサックを背負っていれば、頭の後ろでかぶるようにして守る。うつぶせになれなければ、かがみ込んでもいい。きちんと防御姿勢をとれば、重傷を負う可能性は少なくなる。

もちづき・しょうた

 1984年生まれ、山梨県南アルプス市出身。専門は野生動物管理学。新潟大大学院自然科学研究科博士後期課程修了。同大助教などを経て、2019年から福島大准教授。福島県鳥獣対策専門官、福島県野生鳥獣保護管理検討会委員。

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