能登半島地震で被害が甚大だった石川県珠洲（すず）市では地表の隆起も見つかった。国土地理院の発表では同市若山町の若山川沿いの全長約4キロにわたり、幅100～200メートルが隆起し、最大で約2・2メートルの崖も確認された。
「何じゃこりゃ。柿の木が下がっとる」。自宅の敷地に大きな崖ができた目久田睦雄さん（81）は地震直後に家から外に出た時の驚きを振り返る。以前は見上げていた柿の木が見下ろす形になり、田んぼや周囲一帯に大きな崖が出現していた。後に、専門家の話を聞き、柿の木が下がったのではなく、家の方が上がったことが分かったという。
自宅は基礎の割れやずれが生じて床もゆがんだほか、集落の住民で共同耕作している田んぼも大人の背丈ほどの段差ができ、水路も寸断された。復旧のめどは立っていない。地震は何度もあったが、「こんな目に遭ったのは初めて。景色が変わってしまった」。
元々、後継者がいないといい、「田んぼは一部が壊れると水が張れない。みんな高齢だから復旧に2、3年かかると、もうできないよ。個人の力ではどうしようもない」。例年2月は田植えの準備をしている時期だが、「今年の田植えは無理だろうね」と力なく話した。【三浦研吾】
