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「何のための県民投票か」発起人の32歳、辺野古の“今”に危機感


 「あの投票は何だったのか」。示された民意など無かったかのように、辺野古の海で埋め立て工事が進む。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設を巡り、県民投票で反対多数の結果が出てから間もなく5年。投票の発起人で、沖縄出身の一橋大大学院生、元山仁士郎さん(32)=東京都=は強い危機感を抱いている。【聞き手・宮城裕也】

国が代執行で設計変更を「承認」

 元山さんは当時「『辺野古』県民投票の会」の代表を務め、県民投票を実施するための条例制定に向けて9万人あまりの有効署名を集めた。2019年2月24日に実施された県民投票の結果、埋め立て反対は7割超を占めた。

 しかし、その後の法廷闘争で県側は窮地に追いやられている。埋め立て海域で見つかった軟弱地盤に対応する設計変更を巡り、県側は「不承認」とし、是正を求める国の指示を違法として提訴したが、23年9月の最高裁判決で敗訴した。

 その後も県は承認しなかったが、国側が起こした代執行訴訟で福岡高裁那覇支部は同年12月、県に承認を命じ、再び県側が敗訴した。現在、国が県にかわって設計変更を承認する代執行により、工事が進められている。

「反対」の民意はどこへ

 ――県民投票から5年がたちます。今の沖縄の状況をどう見ていますか。

 ◆あれだけ力を注いでいたものが、5年もたつと薄れていく感じがあります。県全体で考えて答えを残せた意義はありましたが、それだけに投票で示した多数の民意が顧みられていない現状に悔しい思いを抱いています。県民投票が無かったかのように扱われ、辺野古の海が日々埋め立てられていくのを目の当たりにすると、あれだけ多くの人が示した意思が薄れてしまっているように思います。

 ――投票後に県民の変化はありましたか?

 ◆県民投票に向けて行動を起こした背景には、小中高の同級生たちがこの問題をどう考えているか知りたい、率直に話したいという思いがありました。

 基地問題は沖縄の生活に密接に関わるテーマで普段は話しづらいからです。(通常の)選挙では基地以外の争点もあり、シングルイシューの県民投票というとっかかりがあれば話題にしやすいと思いました。今も、同世代でも話すことができるなら話したい、議論して考えたいと思う人は多いと感じます。

 ――沖縄県外の人たちはどうですか。

 ◆県民投票を実施して以降、県外で200回以上の講演をしてきましたが、あとどれだけ話せば変わるのだろうという思いがあります。本土でも関心を持って考えている人もいますが、まだ少ないと感じます。多くの人に向き合ってもらう機会をつくり続け、何とか沖縄への関心が薄まらないようにと自分に言い聞かせてやっている部分もあります。

 沖縄県が敗訴した後、国による代執行がすんなりと進みました。反対の声を意識すれば簡単に代執行はできないでしょうし、国会前に反対する人たちが詰めかけることもあったはずです。

 しかし、政府の考えが変わるほどには、日本の多くの有権者が声を上げていないという現実を重く受け止めないといけません。

返ってこないキャッチボール

 ――民意が無視される県民投票の意義とは何なのでしょうか。

 ◆辺野古移設について議論する前提として「県民の7割は反対だ」という土台を作ったことは意義があったと思います。そして今、その意思が無視されていることが明確になっています。

 辺野古移設の問題は安全保障との関わりや対米関係もありますが、地方自治や民主主義をゆがめているところに大きな問題があります。地元が反対しても国が一顧だにしないということが本当に民主主義と言えるのでしょうか。日本はどういう価値観を大事にしていくのかが問われているように感じています。

 ――5年前、反対多数の投票結果を受け、元山さんは「今度は本土がボールを返す番だ」と訴えていました。今、本土側からボールは返ってきたと思いますか?

 ◆移設工事を進める今の政権は、「沖縄で多数の辺野古移設反対の声は聞きません」というボールを返しているという見方もありますが、果たしてそれはキャッチボールができていると言えるのでしょうか。

 私はボールが返ってきているとは思いません。現政権を選んでいるという時点で、本土に住む有権者にも政府と同じように沖縄の民意を無視していいのか、改めて問いたいです。

「南西シフト」で進む軍備増強

 ――県民投票以降、5年の間にウクライナやパレスチナの情勢が緊迫し、台湾有事の懸念も広がっています。

 ◆緊迫した世界情勢を背景に、「南西シフト」の名の下に琉球列島に自衛隊が配備され、辺野古も含めて軍備の増強が進んでいます。

 県民投票と同時期に、離島の石垣市でも自衛隊配備の賛否を問う住民投票に向けた動きがありました。しかし、実現しないまま23年に石垣駐屯地が開設されました。

 私たちは毎年2月24日に県民投票を振り返る「音楽祭」を企画しています。今年はこうした問題にも目を向けたいという思いから、石垣市でアーティストによるライブや沖縄の課題を語る「2・24音楽祭」を開催します。クラウドファンディングで開催費用などを募っています。当日はオンラインでも配信しますので、ぜひご覧ください。

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