ロシアによる2022年2月24日の侵攻開始以来、2年間続く戦争は多大な犠牲者を生み、ウクライナの社会や経済を変質させてきた。
死傷者について、両国軍ともに最新の状況を公表していない。正確な把握は困難だが、米紙ニューヨーク・タイムズは23年8月、米政府当局者らの話として、ウクライナ側の死者は約7万人との推計を報道。約3倍の兵士を投入しているとみられるロシア側は約12万人が死亡したと推定される。
ロシアとの敵対関係がより深まる中、ウクライナ世論の欧州志向は色濃くなっている。欧州連合(EU)は23年12月、ウクライナの加盟へ向けた交渉の開始で合意。ミュンヘン安全保障会議が今月12日に公表したウクライナ国民の意識調査では、回答者の84%が「ウクライナはEU加盟国になるべきだ」とし、「北大西洋条約機構(NATO)に加わるべきだ」との回答も79%にのぼった。
戦禍は人々の平穏な日常を破壊してきた。侵攻開始以降、ウクライナからは多くの国民が欧州諸国などへ逃れた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、23年12月末時点で約640万人のウクライナ人が国外に避難している。ただ、UNHCRが23年4~5月に欧州で実施した調査では、国外避難民の76%が最終的には帰国を計画か希望していると回答した。
一方、ウクライナ国内では、食料生産や物流網の混乱により、東・南部を中心に食料を安定して確保できない状況が続く。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、24年は730万人が食料などの支援を必要とする見通しで、うち緊急支援が必要な340万人を支援するという。
ロシアの攻撃による社会インフラや工場などの破壊は、経済活動に響いている。侵攻が始まった22年、ウクライナの実質国内総生産(GDP)は前年比29・1%減少。1991年の独立以降で最大の下げ幅となった。その後、各国の支援や復興需要などでプラス成長に転じたが、戦況や支援次第の面もあって懸念は残る。ドイツのキール世界経済研究所は今月14日、ウクライナの26年までのGDP損失は約1200億ドル(約18兆円)に上るとの試算を発表している。【ベルリン念佛明奈】