「プラットフォーマー」と呼ばれる米大手IT企業の業績が絶好調だ。ネット交流サービス（SNS）フェイスブックやインスタグラムを運営するメタの2023年10～12月期決算は、最終利益が前年同期に比べ約3倍の140億ドル（約2兆円）で四半期として過去最高を記録。売上高の9割以上を占めるネット広告収入を伸ばし、人員削減で費用を節約した。1日当たりの利用者数は31億人超で世界人口の4割に迫る。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は声明で「素晴らしい四半期だ。我々のコミュニティーとビジネスは成長を続けている」と自賛した。
この利益、どれくらいすごいのか。日本を代表するトヨタ自動車と比べてみよう。円安などを追い風に23年度は過去最高益の見通しだが、それでも23年10～12月期の最終利益は約1.3兆円。「日本の製造業として過去最高」と報じられているが、同じ期間にメタは1.5倍の利益をたたき出したわけだ。
検索大手グーグルを傘下に持つアルファベットも23年10～12月期に、過去最高の206億ドル（約3兆円）の最終利益を達成。メタと同じく売り上げ増と経費削減のダブル効果で、巨額の利益を生み出した。
ただ、私は快進撃を手放しで評価する気にはなれない。記録的なもうけの陰で、ユーザーの人生を破壊する痛ましい事件が頻発しているからだ。
南部サウスカロライナ州の17歳の少年は22年7月、インスタグラムで同年代の女性と偽ってメッセージを送ってきた何者かにだまされヌード写真を送ってしまった。「金を送らなければ写真をネットで拡散する」と脅され、浴室で拳銃自殺した。南部ノースカロライナ州の47歳の男性は22年9月、車を運転中、地図アプリ「グーグルマップ」に崩壊した橋へと誤案内され、死亡した。近所住民は事故前「橋は存在しない」と何度もグーグルに訴えたが、改善されなかった。後には幼い娘2人と妻が残された。
両社とも安全対策に十分投資していると主張するが、人員削減の中、未成年の利用管理やアプリ苦情対応の人手は足りているのか。ザッカーバーグ氏は1月末、米議会の公聴会でSNS利用により自殺した少年らの遺族に謝罪し再発防止を誓ったが、史上最高益を誇る声明を発表したのは、その翌日のこと。違和感を拭えない。
