北海道内で今冬、インフルエンザウイルスが猛威を振るっている。小中学校を中心に感染が拡大し、学級閉鎖は全道で最大で288件に上った。昨年12月にピークを越えたものの、冬休みが終わった1月下旬以降、再び増加の兆しがある。【片野裕之】
室蘭市港北町の下地内科クリニックは昨年11月ごろから駐車場が満車の状態が続いた。クリニック内の待合室はすでにいっぱいで、インフルエンザの検査を車内でするためだ。市内の定点医療機関当たりの平均患者数は約150人。下地英樹院長(61)は「ものすごかった。一般の患者の受診に影響も出て、一種の医療崩壊になっていた」と振り返る。
道の統計によると、インフルエンザは昨年8月末ごろに流行入りし、10月下旬に定点当たりの患者数が19・58人になった。それから1カ月弱で定点当たり30人の警報レベルを超えた。12月初旬になると、週の症例数が1万3779人とピークに達した。道感染症対策課の担当者は「例年より拡大のペースが速かった。定点当たりの患者数も多い」と話す。
目立ったのが、インフルエンザの集団感染による学校と幼稚園の休業だ。学級・学年閉鎖を含めて一時、449校に上った。その後、12月下旬に幼稚園や学校が冬休みに入ったこともあり、定点当たりの患者数は警報レベルを下回り、1月半ばに注意報レベル(定点当たり10人)を下回った。
ただし、冬休みが明けてから再び感染拡大の傾向にある。1月29~2月4日は症例数が2581人(前週比998人増)で定点当たりの患者数も注意報レベルを突破。1月15~21日に6校のみだった学級閉鎖は1月29~2月4日に学年閉鎖・休校と合わせて90と15倍になった。
抗体持つ人減少、2種同時に拡大
22年12月の定点当たりの患者数は、2人以下だった。道医師会常任理事の三戸和昭医師(73)は今冬のインフル流行の理由を二つ挙げる。一つは人々の免疫の低さだ。コロナ感染拡大以降、インフルエンザが流行せず、抗体を持つ人が減ったという。
もう一つは、2種類のインフルエンザウイルスが同時に広まったことだ。「A型の二つの亜型が拡大し、その両方にかかったという人がかなりいた」と指摘する。
インフルエンザの感染再拡大とともに気になるのが、コロナの状況だ。1月29~2月4日のコロナの定点当たりの患者数は15・4人。昨年9月以来、4カ月ぶりに15人を超えた。三戸医師は「流行スピードは速いが、重症例はあまりない。今後も変異を繰り返して流行は続くだろう」と分析。「手洗いうがいなどが一番の予防策。感染したと思ったら早期に受診してほしい」と呼びかけている。