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吉田寮には人間育む「文化」、代替できぬ 京大側は立ち退き要求


 現存する国内最古の学生寮とされる、京都大学「吉田寮」(京都市左京区)。1913年建設の「現棟」に住む学生らに対し、大学が明け渡しを求めた訴訟の判決が16日、京都地裁で言い渡される。寮生たちが守ろうとしている「営み」とは何なのか。彼らの暮らしを見つめ、吉田寮への思いを聞いた。

 吉田寮を巡り、大学側は訴訟で現棟などから寮生らの立ち退きを求めている。大学側は2017年に代替宿舎の提案を行ったが、寮生で文学部3回生の松村一途(かずと)さん(21)は「吉田寮は『代替』できない」と話す。

 3人兄弟の長男で、進学を控えた弟たちや両親の経済的負担を減らしたいと入寮を決めた。1浪して受験した際、先に入学して寮生となっていた高校時代の同級生から話を聞いた。「自分が知らない文化がそこにある」と感じた。

 「この部屋使って良いよね?」、「後で行くから、先に進めてて」。年齢に関係なく、寮生の多くはお互い「タメ口」で会話をする。言葉には権力差が現れる。それを意識的に排除し「自治の根源」である話し合いの場で対等に意見を出し合えるようにするためだ。強制ではなく選択肢として、寮生がそれぞれの解釈の下で会話をしている。

 松村さんも入寮当初はとっさに敬語が出た。慣れた頃には寮外で初対面の人にタメ口で話してしまい驚かれたこともあったが、「寮になじむことができたのは敬語を使わなくなったからかもしれない」と振り返る。

 長い自治の歴史の中で吉田寮ではさまざまな「文化」が培われて来た。それを下支えしているのは、誰もがいつでも使用できる食堂などの共有空間の存在だ。しかし、新たに寮を設置する場合の文部科学省の方針ではそういったスペースは少なく、大学側が提案した代替宿舎では、人間関係が育みづらいと松村さんは考える。

 「寮の価値は、そこに住む多種多様な人たちの関わり合い。ただ安く住めればよいというものではない」。福利厚生施設としての存在以上に、共同生活をすることで生まれる人間関係の広さと複雑さ、そこから得られる人としての成長に重きを置く。

 松村さんは「この生活を多くの人に体験して欲しい」と話す。吉田寮を残したい理由は明白だ。【山崎一輝】

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