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人間を怖がらない… 崩れたクマとマタギの関係 76歳の嘆き


 かつて人と動物のすみかを分け隔てていた里山が衰退し、野生動物が急速に人間の生活圏に近づいている。クマによる人身被害の急増は、人と野生動物は共生できるのかという根本的な問いを、私たちに突き付けている。

 「山が押してきた」。伝統的な方法で狩猟をする「マタギ」の発祥地とされる北秋田市阿仁(あに)地区。9代目マタギとして家業を受け継ぐ鈴木英雄さん(76)は、クマが人里に下りてくるようになった現状をそう嘆いた。

 2023年11月初旬。民家近くの空き地で鈴木さんが空を指さした。「あれ、なんだかわかる?」

 栗の木に巨大な鳥の巣のようなものがある。木に登ったクマが、実を食べるために枝を折った際にできる「クマ棚」だ。

 地面には根元から引き裂かれた枝や、栗の殻が散らばっていた。「きれいに食べている。クマは本当に賢くて器用だ」。鈴木さんは目を細めた。

 秋田県では同年4~12月、クマによる人的被害が62件と過去最多を記録した。阿仁地区でも人里に出没するクマが増えた。

 鈴木さんは10月、民家のそばや線路沿いで何頭ものクマを目撃した。車や人が近くを通っても逃げるそぶりを見せず、一心不乱に食べ物を探していた。バス停に座り込んでいた場面にも出くわした。

 「クマがバスを待っとる」。住民とそんな軽口を交わしたが、胸中は複雑だった。

 「子どもの頃は何キロも山道を歩いて小学校に通ったけれど、クマに遭遇したことは一度もなかった。父親やじいさんからも、里にクマが出たなんて聞いたことはなかった」

100人以上いたマタギが40人に激減

 鈴木さんは「巻き狩り」と呼ばれる集団での狩猟で、リーダーの「シカリ」を務めてきた。雪に残った足跡を追い、クマを見つけると「勢子(せこ)」が猟犬を使って谷から尾根へとクマを追い上げる。仕留めるのは鉄砲撃ちの役割だ。

 クマは、マタギが使う爆竹のにおいや猟犬の声などで「人間は怖い」と学習する。それは母グマから子グマへ受け継がれ、奥山にこもって人里には来ない。だからマタギは山に入り、クマを追う。長く保たれてきたこの関係が、今は崩れてしまった。

 北秋田市によると、阿仁地区(旧阿仁町)の人口は23年11月末時点で2245人。65歳以上の高齢化率は59%に上り、若者の多くは進学と同時に町を出てしまう。鈴木さんによると、1996年に地区で100人以上いたマタギも今は約40人まで減った。

 地区はかつて、山あいに広がる棚田の美しい光景で知られたが、農業の担い手が減り、棚田の多くは草地に変わった。「耕作放棄地はクマの格好の隠れ場所になる。空き家も増え、敷地に残された栗や柿の木を狙ってクマが寄ってくる」と鈴木さんは言う。

 ただ、草を刈ったり、放置果樹を撤去したりする人手がない。鈴木さんは近所の手入れも手伝っているが、「これ以上年を取ったらできるか分からない」と将来を危ぶむ。【菅沼舞】

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