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ヨルダン川西岸は「無法地帯」 パレスチナ人蜂起で“第2のガザ”も


 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区アッサウィヤ村は、住民待望のオリーブの収穫時期を迎えていた。昨年10月28日、ビラル・サレフさん(40)も親族と共に自分の畑に出かけた。皆で収穫し、談笑して、食事を取る。毎年恒例の行事だった。

 気がかりはユダヤ人だった。西岸地区には約300万人のパレスチナ人が暮らす一方、イスラエルは1967年から軍事占領し、現在は70万人以上のユダヤ人が国際法違反状態で入植している。入植者によるパレスチナ人に対する暴力は日常茶飯事で、昨年10月にガザ地区でイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘が始まると緊張はさらに高まった。ただ村から最寄りの入植地までは約3キロ離れており、ビラルさんは安全だと判断していつものように作業を始めた。

 ところが収穫を始めてしばらくした午前8時ごろ、親族が叫んだ。「入植者が来た」。数人の男が畑に向かってきて、1人は銃で武装している。ビラルさんらは慌てて自宅の方向に逃げた。

 しかしビラルさんは携帯電話を畑に忘れたことに気付いた。「子供たちを家に帰らせて。携帯電話を取ってくる」。すると数分後、畑からパン、パンと2発の銃声が響いた。ビラルさんは胸を撃ち抜かれ、血を流して倒れていた。病院に運んだが、すでに息絶えていた。

 家族はイスラエルの市民団体とともに、入植地にある警察に被害を訴えた。警察は容疑者を見つけて一時拘束したものの、すぐに釈放した。その後、捜査の行方は一切聞かされていない。

 「なぜ何もしていない夫が、撃たれなくてはいけないのでしょうか?」妻のイクラスさん(33)は声を震わせる。8~15歳の4人の子供がおり、一家の収入は途絶えた。次男のムーサさん(8)は今も父がいなくなったことを信じていない。寝る際には「明日になったらパパが来て、僕のことを起こしてくれると思う」と繰り返す。

 国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、2023年10月7日~24年1月29日の間、西岸地区で入植者による暴力事件は472件起き、そのうち104件で死傷者が出た。暴力事件は23年全体では1229件発生し、OCHAが06年に調査を始めて以来、最多だった。その多くで容疑者が処罰されていないとみられ、西岸地区は「無法地帯」になっている。

 これに対してパレスチナ人は反感を強め、一部がユダヤ人を襲撃する事件も相次いでいる。不満が大規模蜂起となって爆発し、「第2のガザ」になるのではないか。西岸地区ではそんな懸念が日増しに高まっている。【アッサウィヤで三木幸治】

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