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鍋を火にかけたまま…なぜ相次ぐ初歩的ミス 鳥町食道街火災1カ月


 北九州市小倉北区の鳥町食道街一帯が焼けた火災から3日で1カ月となった。火元とみられる飲食店関係者は福岡県警などに「油の入った鍋を火にかけたまま店外に出ていた」と説明しているとされる。2022年8月に同区の旦過(たんが)市場一帯で起きた火災でも、ほぼ同様の状況で出火したとして、飲食店関係者が業務上失火容疑で書類送検された。なぜ初歩的なミスが繰り返されるのか。関係者は頭を抱える。

 鳥町食道街一帯の火災は1月3日午後3時ごろ発生。隣接する魚町銀天街にも延焼し、市消防局によると、延べ約2730平方メートル、36店舗(いずれも確定値)が焼損した。鳥町食道街の関係者によると、火元とみられる飲食店内は出火直後、煙が充満していて人影は見えなかった。同店関係者は「油の入った鍋を火にかけたまま外に出ていた」と話していたという。

 鳥町食道街の南約300メートルにある旦過市場一帯でも22年4月と8月に火災が起き、計5000平方メートル以上が焼損した。県警は8月の火災について、当時飲食店を経営していた60代の女性が、使用済みの油と廃油処理剤を入れたフライパンに火を付けた状態でその場を離れたため、約20分後に過熱した油が発火して天井に燃え移り、大規模火災に至ったと判断。23年12月に女性を書類送検した。

 旦過市場での2度の火災を受け、市は再発防止に取り組んできた。22年11月から消防局OBを防火指導員として採用。飲食店などへの巡回指導を強化し、火元を離れないよう店主らへの啓発を続けてきた。木造店舗が密集する鳥町食道街にも計4回、防火指導に入り、火元とみられる飲食店も指導を受けていたという。それだけに今回の火災の衝撃は大きく、鳥町食道街の関係者は「一度燃えると終わりだと重々承知し、注意していたはずなのに……」と肩を落とす。

 市消防局の担当者は「歯がゆくて仕方ない。中長期的には木造密集地域の建て替えなどを進めていくが、火災原因の多くが人的ミス。火を使う人には責任があると注意喚起を続けていくしかない」と話す。

 総務省消防庁によると、天ぷら油などを用いた調理中の火災は22年に全国で1204件発生し、原因は消し忘れ・放置が887件と全体の7割強を占めた。消防庁予防課の担当者は「かけた火は最後まで責任を持つことに尽きる。当たり前すぎて油断してしまうが、火は危険だと普段から意識してほしい」と語る。

 火災を受け、北九州商工会議所などは「魚町火災復旧支援の会」を設立し、がれき撤去費用などを支援するためのクラウドファンディング(CF)を1月中旬から開始した。2月末までの目標額は3000万円。だが、2日現在で集まった寄付金は目標額の10分の1の300万円超にとどまっている。

 2度の旦過市場火災ではCFやその他の義援金で計約1億5000万円が復興支援のために集まったが、今回は当時に比べ、支援の機運が盛り上がっていない。被災した飲食店関係者は「市民に『またか』と思われても仕方がない。能登半島地震とも重なり、支援してほしいと強くは言いにくい」と打ち明ける。

 元東京消防庁麻布消防署長で公益財団法人「市民防災研究所」(東京)の坂口隆夫理事は「飲食業などで日常的に火を取り扱っていると『火は危険だ』との意識が薄れやすい」と指摘。考え事や来客対応で集中力が途切れた時が特に危険で、火災につながるミスが起こりやすいという。

 予防策として、目に付きやすいところに「コンロの火を消したか」と注意喚起の張り紙を掲示したり、周囲の人から「火の始末は大丈夫?」と一声かける習慣をつけたりすることが効果的だとし、「自分を過信せず、『火を使う時は目を離さない』という基本を徹底してほしい」と話した。【山下智恵、河慧琳】

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