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福島・双葉町のノウハウ、能登にも 富山出身の町職員、復興に汗


 出身地の富山県黒部市を後にして「復興の一助に」と、福島県双葉町の職員となった人がいる。宮津健(たけし)さん(32)。この正月、実家で能登半島地震に遭い、震度5弱の揺れと津波の恐怖を体験した。「双葉町の復興がうまく進めば、そのノウハウを使って何かできるかも」。壊滅的な打撃を受けた能登半島を気にかけながらも、東京電力福島第1原発事故で今も町外に避難する町民との絆の維持に努める。【柿沼秀行】

 黒部市役所に勤務していた宮津さんは2018年、市が双葉町の派遣職員を募集しているのを知り、「気軽な気持ちで」応募したという。全町民が町外に避難しているのは知っていたものの、実際に倒れた家屋などがそのままになった様子を目の当たりにして初めてがくぜんとしたという。

 1年間の派遣期間を終えていったん黒部市に戻ったが、「町の復興に関わりたい」との思いが募り、再び双葉町へ。21年度、正式な町職員として採用された。

 解体した土地の管理のため、町民に除草剤を配布する仕事を通し、ため息をつく町民の顔を見てきた。「長い避難生活を強いられて自宅を更地にし、現実的には住めそうもない土地の固定資産税を払わないといけない。不条理ですよね」と深い同情を寄せる。

 町は22年8月、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除され、「住民ゼロ」の状況は解消された。だが、今も6500人以上の町民が町外に避難する。

 宮津さんは現在、町が提供する町民の情報交換アプリを使った交流会を各避難先で定期的に開いている。参加者が町の空撮映像を見ながら「ここに何が建つの?」「ここ、俺んちがあったんだ」といった話題で盛り上がる様子に「良いつながりだなあ」と実感するという。

 「町の課題は挙げればきりがありませんが、交流会などを通して避難者の絆を維持していくことが、今の自分の一番大事な仕事」。「町に戻りたい」と思える気持ちがわくのも、町民同士の絆が保たれていればこそだと思っている。

 「骨を埋める覚悟で」双葉町へ来て、充実した仕事ができていると思えるようになった中で起きたのが、故郷の富山県、石川県を襲った能登半島地震だ。里帰りして両親とのんびりした元日を過ごしていた時に、強い揺れに襲われ、直後に津波警報が出た。実家は海岸から50メートルの海辺。あわてて母(62)を連れて山の方にある中学校へ走った。父(71)とも後で合流し、警報が注意報に変わった2日未明に自宅に戻ったという。家も両親も無事だったが「日ごろの心構えがいかに大切か痛感した」と振り返る。

 4日の仕事始めに合わせて双葉町に戻ったが、風景が一変した愛着のある北陸の様子をニュースで見ると心が痛む。「今も大勢の町民が町外に避難している双葉町という存在が、一般の関心の外にあるとの危機感がある。同じく、いずれ能登も復興の前に忘れられていくのではという不安を感じる」。その時に何ができるか――。すぐには思い浮かばないが、「伝承のあり方とか、能登で生かせるような復興のモデルを双葉町で作れればいいかな」。何年かかっても復興に汗を流す覚悟だ。

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