落語家師匠が弟子にパワハラ 「土下座せえ」東京地裁が賠償命令

　師匠だった落語家の三遊亭円歌さん（64）から暴行や暴言を受けたとして、落語家の吉原馬雀（よしわら・ばじゃく）さん（41）が円歌さんに300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、円歌さんに80万円の支払いを命じた。杜下弘記裁判長は、円歌さんによるパワーハラスメントを認定し、「社会的に許される範囲を逸脱し違法」と指摘した。

　判決によると、2013～22年、馬雀さんは円歌さんから「土下座せえ、ばかやろう」と怒鳴って頭を殴られたり、飲食店に呼び出されて「なめてんのか、てめえ」と怒鳴られたりした。

　円歌さんは訴訟で「指導の一環だった」と主張したが、判決は円歌さんの言動について「落語界において師匠が弟子に対して絶対的上位者の地位にあることが背景にある」と指摘。馬雀さんは甘受せざるを得ず、逃げ場がなかったとした。

　馬雀さんは23年、別の師匠の門下に移籍した。判決後に記者会見した馬雀さんは「指導の名を借りた長年のハラスメントが認められ、安堵（あんど）している」と述べた。落語界では他にも同様の被害があるとし、「業界として対応する必要がある」と話した。【巽賢司】