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当たり前のことができる幸せを伝えたい がんで逝った妹の絵本出版へ


 広島県福山市出身の山岸彩さん(33)=徳島県藍住町=は、双子の姉の城戸茜さんが乳がんを発症してから29歳で亡くなるまでの闘病を記録した絵本「幸せってなぁに?」を自費出版する。立って歩いたり、お風呂に入ったりする当たり前のことができる感謝や命の大切さを伝えようと制作を決意した。31日までクラウドファンディング(CF)サイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で絵本制作の資金を募っている。

 彩さんや茜さんは4人姉妹。長女の茜さんは困っている人がいたら考える前に助けに行く行動的な性格で、消防士として働くことを目標にしていた。高校卒業は救急救命士を養成する大阪の専門学校に通い、2012年に呉市で念願の消防士になった。「自殺未遂の女性を説得して救助できたことが、消防士として一番やりがいを感じた」と誇らしく語っていたという。

2カ月かけ各地へ旅に

 乳がんが発覚したのは17年7月。「胸がちくちくする痛みがある」と訴え、診察を受けると左胸に乳がんが見つかった。

 11月ごろに摘出手術を受け、その後体調は回復傾向にあったが、19年の年明けごろからせきが出るようになった。3月に家族旅行で出かけた宮島で、せきをした拍子に肋骨が折れ、救急車で搬送された。その際受けた検査で転移していることがわかった。転移は全身に広がり、余命1カ月と宣告された。

 もともと元気で活発な茜さんが病室で暗くうつむく姿に、彩さんは外に連れ出し2人で旅に出ることを考えた。

 旅は6月にスタート。北海道や東京、長野などさまざまな地域を約2カ月かけて巡った。旅の様子はSNSで毎日発信し、楽しむ姿も体調がすぐれず苦しむ様子も伝えた。

 最期は家族に見守られ、福山の実家で息を引き取った。19年8月26日だった。

「命の大切さ、気づいて」

 一緒に育った双子の姉を失い、絶望感に襲われた彩さん。だが、生前の旅のSNSに寄せられていた「病気だった自分も励みになった」という何人もの投稿を見直すと、「新たに何か発信すれば、同じように病気で苦しむ人を勇気づけられるのではないか」と考えるようになった。「人助けが大好きだった茜も喜ぶはず」。子供にも分かりやすい絵本にして出版することを決めた。

 絵本はA4判23ページ。茜さんの顔を大きく絵の具で描いた。普通にできていたことが、病気の進行とともに徐々にできなくなってゆく。もりもり食べていた食事の量が減り、ご飯を一口ずつじっくり味わい、呼吸がうまくできずに苦しみながら深呼吸できるありがたさを実感する……。笑顔があり、泣き顔もある。絵も文章も彩さんが一人で仕上げた。

 世界を旅してきた彩さんらしく、英語やスペイン語などでも出版することを考えている。「幸せは当たり前のようにあるわけではない。絵本を通して子どもたちから大人まで命の大切さに気づいてほしい」。茜さんのメッセージを世界中の人に届ける準備が進んでいる。【井村陸】

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