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倒壊した自宅から救助の女性 夫がくれた「奇跡」の光 能登地震


 「『俺は母ちゃん守るし、お前はそっち行って生きろ』って、均(ひとし)さんが私(の背中)をポンと押してくれたんじゃないかと思う」。押し潰された家で九死に一生を得た広田寿子(じゅうこ)さん(63)は涙をこぼした。多くの家屋が倒壊した石川県珠洲(すず)市の宝立町鵜飼(ほうりゅうまちうかい)の自宅で、夫の均さん(65)と義母の咲子(さきこ)さん(93)を亡くした。

 翌日に子供や孫たち総勢15人が集まるため、机を三つ並べておせち料理やすき焼きの用意を終え、こたつでホッとした時にガタガタと揺れが来た。均さんは隣室にいた咲子さんの元へ。そこへ家が崩れ、気づくと真っ暗だった。寿子さんはがれきをドンドンたたき「助けて! ここにおります、広田です」と何度も叫んだ。

 暗闇の向こうに小さな光が見えた。小さな穴を近所の人たちがどんどん広げ、1時間もしないうちに引っ張り出してくれた。だが均さんと咲子さんがいない。大声で呼んでも返事がない。翌朝、均さんもかつて務めた消防団の後輩たちが駆けつけ、手でがれきを取り除いていった。

 声が飛んだ。「均さん、おばあちゃんをかぼとるよ(かばっているよ)!」。咲子さんに覆いかぶさり、その背中を太いはりが直撃していた。「握りこぶし、ぎゅーってして。苦しんだ顔ではなかったのが救い」と寿子さんは声を震わせる。

 寿子さんが通った地元の県立飯田高の先輩だったのが均さんだ。どちらもバレーボール部のセッターだった。均さんは鵜飼地区で唯一のクリーニング店を長く経営し、ワイシャツ1枚の依頼でもお得意さんの元に取りに行き、丁寧に洗濯とアイロンがけをして届けた。咲子さんは大正琴や短歌、編み物が好きで、ひ孫や孫たちの成長をいつも楽しみにしていた。

 暗闇で見えた小さな光は均さんがくれた「奇跡」だと信じる寿子さん。前を向こうとするが不安は尽きない。「孫にも恵まれて、これからって時にやられちゃったなあ。10年後に珠洲はあるかなあ……」

【佐藤緑平、城島勇人】

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