能登半島地震で、富山湾で観測した津波が、震源から離れているにもかかわらず地震発生直後に到達していた。この「謎の津波」は海底地滑りで引き起こされた可能性があると、東北大の今村文彦教授(津波工学)のチームが発表した。
七尾港よりも24分先に
気象庁によると、富山市で津波の第1波を観測したのは1日午後4時13分。地震発生から1~2分後で、気象庁の到達予測より約7分早かった。より震源に近い石川県の七尾港よりも24分先に到達していた。
チームが、国土地理院などの断層データをもとに能登半島地震の津波全体をシミュレーションしたところ、富山市への到達は約5分後と見込まれた。富山湾の津波は、断層のずれだけでは説明できない現象だという。
富山湾では、地震直後から引き波が観測された。このことから、地震の揺れに伴う海底地滑りが富山湾の津波を引き起こした可能性があるという。
津波は海底地形の変動によって起きるため、海底の地滑りや山の崩落も原因となる。富山湾は水深が1000メートル以上と深く、海底地形が急勾配になっている。富山沖には約16の海底谷があるとされる。今村さんは「海底谷には河川からの土砂が堆積(たいせき)しているとみられ、大きな揺れで崩れたのではないか」と話した。【山口智】