イスラエル軍は29日夜、パレスチナ自治区ガザ地区の南部ハンユニスで戦車による砲撃や空爆を実施した。中部のヌセイラット難民キャンプも空爆するなど、広範な地域でイスラム組織ハマスを標的とする激しい攻撃を続けている。ロイター通信などが伝えた。また、イスラエル軍は同日、北部ガザ市近郊でハマスのガザ地区トップ、シンワル氏の「隠れ家」の一つを発見して破壊したと発表した。
イスラエル軍は、シンワル氏が10月7日のハマスによる奇襲攻撃の首謀者とみて行方を追う。発表によると、発見されたシンワル氏の隠れ家は1棟の集合住宅で、深さ20メートル、長さ218メートルの地下トンネルへの入り口もあった。トンネル内は生活インフラが整えられ、礼拝所や休憩室もあったという。イスラエル軍はこの隠れ家を「トンネル網の一部」だと説明。この数週間に発見し、調査後に破壊したとしている。
戦闘がやまない中、ガザ地区の状況は悪化している。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は29日、X(ツイッター)への書き込みで「ガザで感染症が増えている」と指摘。10月中旬からの2カ月間に、避難所の18万人近くが呼吸器系の感染症に罹患(りかん)したと明らかにした。テドロス氏は、住民が繰り返し避難を強いられ、医療施設もパンク状態となっていることから「感染症の脅威の拡大を非常に懸念している」と訴えた。
国際社会の動きも続く。南アフリカは29日、イスラエルのガザ攻撃が「ジェノサイド(集団殺害)の性格を持つ」として、国際司法裁判所(本部オランダ・ハーグ)に対し、これをジェノサイド条約違反と宣言するよう求めた。イスラエルに軍事行動の中止を命じる暫定的措置も要求した。米CNNによると、イスラエル外務省は、南アの主張を「事実ではなく、法的根拠もない」と反発している。
一方、国連安全保障理事会は29日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の情勢を協議する緊急公開会合を開いた。各理事国は、ユダヤ人入植者によるパレスチナ人への暴力の急増を懸念し、ガザでの戦闘が周辺地域の情勢悪化につながることを警戒した。
会合を要請したアラブ首長国連邦のヌセイベ国連大使は、パレスチナ問題の対応に各国が失敗すれば「ガザの『地獄絵図』が西岸やイスラエル、レバノンなど他の中東地域に拡大する」と述べ、危機感をあらわにした。【岡大介】