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自宅裏手に4階建てビル級の盛り土 業者「自分の土地」の一点張り


 福島県西郷村と矢祭町の計4カ所で、関東地方から大量の土砂が運び込まれ、山積みにされたままになっている。県は、さらに少なくとも4件の搬入事例があるとみて確認を進めている。県内に盛り土を規制する条例がない中で安全性が危ぶまれる土砂の運び込みが相次ぎ、不安にかられる現地の住民らは対策を急ぐよう求めている。【根本太一、松本ゆう雅】

 西郷村の甲子温泉のふもとにある民家の裏手に、4階建てビルの高さほどの土が積み上げられていた。下から見ても、無数の大きな石が確認できる。この家の女性(64)によると、7月半ばになって深夜から明け方まで、猛暑で眠れない日々にダンプカーが往来していたという。

 住宅と盛り土の間を遮る物はなく、女性は「台風で線状降水帯が発生したなら一挙に家が潰されはしないか。雪が積もった後の雪崩も怖い。88歳を過ぎた母もいて、避難する先はない」と訴える。

 村によると、村内への同様の土の搬入は昨年7月ごろに始まり、この場所は確認しただけで3例目だ。盛り上げたのは関東地方の複数の建設関連業者で、いずれもその土地の所有者。村からの問い合わせに対しては「自分の土地に自分の(別の)土地から出た土を運んでいる。違法性はない」などの一点張りだという。

 約0・5ヘクタールの森林で土砂の運び込みを把握した矢祭町は7月、地権者である茨城県内の業者に対し、土砂の流出や災害を防ぐために林地の利用の適正化を図る「小規模林地開発」の仕組みに基づく行政指導をしたが、業者は「資材置き場を作るための盛り土で、コンクリートの安全壁を周囲に設ける」と回答。壁は12月になっても造られず、担当者は「厳しく指導できる条例がない」と嘆く。

 中通り地方の別の町では、「林業を起こすため荒れた雑木を伐採する」との届け出を認め、更地にされた後に「土地はくぼ地なので、植林のために埋め立てる」と一方的に通告され、土砂の運び込みが続いている。県にも相談しているという。

 盛り土を巡っては、死者が28人に上った21年7月の静岡県熱海市の土石流災害をきっかけに「盛り土規制法」が制定され、今年5月に施行された。都道府県や市が、住宅などに危害が及ぶ可能性があるエリアを指定し、規制区域内で盛り土をする場合は許可が必要になる。違反した法人には最高3億円の罰金を科すなどの罰則がある。

 土砂に有害物質が含まれる場合には廃棄物処理法や土壌汚染対策法の規制があり、内堀雅雄知事は4日の定例記者会見で「有害物質の混入などが確認された場合には、搬入者に対し撤去指導を行う」と述べた。盛り土規制法による規制区域の指定については「指定に向けた基礎調査を実施し、今年度内に調査結果を取りまとめ、市町村と調整しながら、今後、規制区域を指定する」と説明した。県都市計画課によると、指定は早くても25年5月になるという。

 それまで約1年半。西郷村で盛り土におびえる日々を過ごす女性は「それまで私らの命の安全は誰が保障してくれるのか? 村も県も今すぐ業者と協議し、対策を進めてほしい」と訴える。

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