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赤信号無視のバイクが交差点に ぶつかった右折車は有罪?無罪?


 交差点を車で右折中に、対向車線を赤信号で直進してきたバイクとぶつかった事故で、車の運転者は罪に問われるのか――。車を運転していたナイジェリア国籍の男性(53)が自動車運転処罰法違反(過失致傷)などに問われた裁判の判決が27日、福岡地裁である。検察側はバイクが赤信号で交差点に進入してきたことを把握しないまま男性を起訴。弁護人から指摘を受け、起訴後の再捜査でこの事実を把握したが、それでも「男性が注意義務を怠った」と有罪を主張している。判決の行方は。

 事故は2021年10月7日午後7時ごろ、福岡県古賀市中央2の国道3号交差点で起きた。現場は右折専用を含め片側4車線。男性運転の普通乗用車が右折しようとしたところ、対向車線を直進してきた30代の男性運転のバイクと衝突した。

 事故後、2人は付近で数分間話した後、ともに現場を離れたが、バイクの男性はその後に妻の車で現場に戻り、事故から約1時間たって警察に通報した。バイクの男性は事故の5日後に足の骨折と診断された。

 県警の調べに対し、バイクの男性は「交差点の直前で黄色信号を確認したが、止まると危ないと思い、そのまま進行した。衝突した後に信号を見たら赤だった」と説明。福岡区検は22年3月、車の男性を「対向車線に渋滞停止車両があって見通しが困難なのに、安全を十分確認しないまま右折した。事故発生も警察に申告しなかった」として、自動車運転処罰法違反と道路交通法違反(不申告)で略式起訴した。

 福岡簡裁はその後、罰金30万円の略式命令を出したが、被告は不服を申し立て、正式裁判が開かれることになった。被告は初公判を前に、国選でついた弁護人に「バイク側が赤信号を無視してきた」と訴えた。

 弁護人は、検察側が証拠として開示した現場近くの防犯カメラ映像を調べた。車両用信号機の状況や衝突の様子は映っていなかったが、交差点の歩行者用信号が赤に変わった後にこのバイクの前照灯が衝突地点の近くに映っている場面があった。

 開示された信号機のサイクル表によると、車両用信号が赤に変わるのは歩行者用信号の3秒後。弁護人が映像を更に分析した結果、バイクは車両用の信号が赤に変わって、1・6~1・8秒後に交差点に進入した可能性が浮上した。

 検察側は防犯カメラ映像を解析した捜査報告書を作成していたが、信号についての記載はなかった。弁護人の指摘を受け、映像を改めて解析。その結果、バイクは第1車線と第2車線の間を走っており、▽信号が赤になった時点で停止線の約20メートル手前にいた▽その1・2秒後までに第1、第2車線の車を追い抜き、1・8秒後までに停止線を越えて交差点に進入した――と推定した。ほぼ、弁護人の指摘通りだった。

 だが、検察側は起訴を取り消さず、22年6月の初公判後、起訴状の内容を変更(訴因変更)した。当初は「対向車線に渋滞停止車両があって見通しが困難だった」としていた、過失にかかわる内容を「赤信号になった直後は対向車線を走る車が停止線手前でまだ完全に停止しておらず、車の脇の見通しが困難だった」と変更。「(それなのに)車の脇を進行してくる車両の有無などを十分確認しないまま右折した」として公判を続けた。赤信号でも車の死角から交差点に飛び出してくる車両がないか注意すべきだったという主張だ。

 男性側は公判で「青信号で右折レーンに入り、交差点の信号が赤になったので右折を開始した。赤信号を無視して交差点に進入してくるバイクまで予測する義務はない。事故の不申告も処罰するほどの違法性はない」などと無罪を訴える。1年以上にわたった公判は23年9月、検察側が罰金10万円を求刑し、結審した。

 男性の運転に自動車運転処罰法違反が成立するか否か。判断の分かれ道は、交通法規を守らないバイクがいることまで想定すべき「特別な事情」があるかどうかだ。「信頼の原則」とも言われる。

 弁護側は、交差点の信号が赤に変わり、男性は見えていた対向車線の車が減速して停止しようとする様子を確認し安全と判断したと指摘。「バイクも赤信号に従って停止すると信じるのが当然で、特異な運転を予測すべきという特段の事情はない」と主張する。

 検察側は「赤信号になったとしても、『(急には)安全に停止できない』と判断した対向車両が交差点に進入してくる可能性がある。車の男性はそれを予測できたし、予測する義務もあった」とする。

 元刑事裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授(刑事法)は、判決のポイントの一つは対向車両の状況を裁判官がどう捉えるかだと指摘する。「『赤信号になって対向車線の車が減速しているのだから、その後方から飛び出してくるバイクはないと信頼していい』と裁判官が判断すれば、自動車運転処罰法違反は無罪だ。一方、対向車が完全に止まった状況ではなかったということを裁判官が重くみれば、有罪という判断もあり得る」【志村一也】

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