「私たちだって“いいふうふ”になりたい」。同性カップルたちの思いがタイトルに込められたパネル展が各地で開催されている。主催者でLGBTQなど性的少数者の立場から発信を続けているのが、特定非営利活動法人「カラフルブランケッツ」（大阪市生野区）だ。井上ひとみ理事長（44）は「当事者が身近にいることを知ってほしい」と話す。【まとめ・木村綾】
――活動を始めたきっかけは何ですか。
◆2015年に扇町公園（大阪市）で開かれたレインボーフェスタでレズビアンカップルとして公開結婚式を挙げ、カミングアウト（打ち明け）したことです。それまで同性愛は「気持ち悪い」「怖い」と言われていて、言いたいけど言えるはずもないと思って暮らしていました。
そんなときに公開結婚式を挙げないかと実行委員をしている友人から誘われました。私は獣医で動物病院を開業していたので、うわさが出回ったら病院がつぶれるんじゃないかと心配しましたが、友人でもある院長が背中を押してくれ、当事者が身近にいることを知ってもらうことは大きな意義があると思いました。
「レズビアンなんて気持ち悪い」と言っていた別の友人に意を決してカミングアウトしたら、「そんなひどいことを言ったなんて覚えていないけど本当にごめん」とすごく祝福してくれました。身近に当事者がいると思っていないからこそ差別的なことが言えてしまうのだけれど、身近にいることが分かれば考えも変わるのだと実感し、活動していこうと決めました。
――どのような活動から始めましたか。
◆同性カップルとして講演をしました。LGBTQの基礎知識や、「自分が同性愛者と気付いてから、なぜカミングアウトできなかったのか、カミングアウトしてどうだったか」といったストーリーを話しています。18年に大阪市で「パートナーシップ宣誓証明制度」を第1号で利用してからは、話を聞きたいという自治体からの依頼が増えました。
――講演で大事にしていることは何ですか。
◆押しつけがましくならないようにすることです。自分と違うセクシュアリティー（性的指向や性自認）について理解するのは、本当に難しいと思うんです。私はレズビアンですが、ゲイの方やトランスジェンダーの方の気持ちを全部理解できているかと言ったら絶対できていない。理解できなくて当然だと思うんですけど、そういう人たちがいるということを知識として知って、気持ちを想像して、寄り添ってもらえたらうれしい、と伝えています。
――「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」と題したパネル展も開催していますね。
◆21年の「いい夫婦の日」に大阪で初めて開催しました。同性婚が認められないとどういう不具合があるのかや、現在同性カップルができる法的な備えについて紹介していて、同性カップル13組がお互いに向けたラブレターも展示しています。巡回展にしようとは思っていませんでしたが、他の場所でもしてほしいという声があり、これまでに15回ほど開きました。
――展示の目的は何ですか。
◆同性婚の法制化に向けて、世論の後押しをしてもらいたいです。「友人や知人、親戚やきょうだいがもしかしたら同性愛者かもしれない」と自分ごととして考えてもらったり、「同性婚ができるようになっても幸せな人が増えるだけだ」と思ってもらえたりしたらと思います。法制化することで国として、同性愛者やLGBTQの人たちも他の人たちと同じように権利があり、同じように暮らしてもいいんだと知らしめてほしいと思って取り組んでいます。
――今悩んでいる当事者の方には何と伝えたいですか。
◆一人じゃないよ、ということに尽きます。仲間はいっぱいいるし、難しいかもしれないけれど誇りを持って生きてほしいなと思います。当事者の知り合いがいない、誰にも相談できないという人はまだ多く、私たちの団体でも、そういう人たちのつながりを作る交流会をしています。
特定非営利活動法人 カラフルブランケッツ
2016年からLGBTQについて知ってもらうための講演活動などを始め、19年にNPO法人化。3カ月に一度、当事者や支援者の交流会を大阪市内で開くなどしている。「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」は、11月19日にJR京都駅ビル駅前広場（京都市下京区）などで開催予定。詳細や問い合わせはホームページ（www.colorfulblankets.com）。
