starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

レトロな車、おもちゃ、味… 「マビ昭和館」激動の時代の足跡


 激動の時代に生まれた品々を通して、昭和の文化を伝え続けたい――。2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町地区にある私設博物館「マビ昭和館」(同市真備町辻田)が今月、リニューアルオープンした。喫茶スペースを新設して開館日もこれまでの月1回から2回(第1・3日曜)に増やし、丸岡律夫館長(81)は「昭和を生きた高齢者だけでなく、幅広い年代の人に楽しんでもらいたい」と意気込んでいる。

 再スタートを切った1日、昭和時代に活躍した旧車や生活用品、高倉健や石原裕次郎ら銀幕スターの映画ポスターやおもちゃなど、丸岡館長が収集した約1万2000点がずらりと並ぶ館内では、県内のバンドなど9組が昭和のヒット曲などを披露。集まった高齢者や親子連れが展示品に見入りながら、懐かしのメロディーに耳を傾けていた。

 新設の喫茶スペースの目玉商品は、「昭和レトロカレー」。かつおだしをベースにし、具は形が残るようにあえて大きく切って昭和の家庭の味を表現した。一杯500円。丸岡館長は「最近は一杯1000円近くするが、金もうけが目的ではないので、昭和に近い値段で楽しんでもらいたい」とほほ笑む。

 自動車整備会社に勤めていた丸岡館長は、40代の頃に「定年退職したら乗って遊ぼう」と、オート三輪のダイハツ・ミゼット(1970年式)などの旧車2台を購入。これを機に旧車や国内外のミニカーの収集を始めたが、次第に関心は昭和時代に生まれたさまざまな品々に移っていった。丸岡館長は「高度経済成長で日本が発展する中で、さまざまなモノが進化を遂げた。昭和の品々にはその過程がある」と語る。

 2010年に自宅近くの貸倉庫として使っていた建物を改築してコレクションを保管していたが、「見た人が喜んでくれるなら」と12年10月に「マビ昭和館」を開館し、毎月第1日曜に無料で一般公開してきた。入館料を取らなかったのは、「金もうけ目的ではなく、趣味の延長だから」だという。

西日本豪雨、展示品が水没

 昭和館は全国から旧車ファンや昔を懐かしむ人たちが集う人気施設になったが、困難もあった。18年7月の西日本豪雨では1階部分が浸水被害を受け、展示していた旧車やバイクが全て水没。ポスターや食器、古銭など約3000点は廃棄せざるを得なくなった。近くにある自宅も被害を受け、閉館も頭をよぎった。

 だが、旧車ファンの思いに支えられた。連日30人ほどが県内外から訪れ、泥だらけになった倉庫内の片付けを手伝ってくれた。また、交流があった自動車整備を学ぶ高校生や専門学校生らが、水没した車の修理を買って出てくれ、廃棄した1台を除いて再び動くようになった。丸岡館長は「これは恩返ししないと」と翻意し、スタンドバーや理髪店、駄菓子点店など昭和の街並みを再現した「昭和レトロ横丁(よこちょう)」を新設して、19年5月に復活。新型コロナウイルス禍で度々休館を強いられながらも、ファンの心を魅了してきた。

 今年、西日本豪雨から5年の節目を迎え、「みんな頑張ってここまで立ち直ってきた。何か変わったことをして、さらに元気づけたい」とリニューアルを決意。開館以来無料だった入館料を、高校生以上500円とした。有料化に踏み切った理由を聞くと、丸岡館長は「最近の物価高もあるけれど……」と苦笑いし、こう続けた。「後継者のことを考えた。残していくにも経費がかかるので、入館料無料では誰も後を継いでくれない。少しでも入館料を取る形にしておけば、考えてくれる人も現れるのではないか」

 開館以来、見学に訪れる人は60~70代が多かったが、近年はレトロブームで若い来館者が飛躍的に増えた。見たこともない昔の品々を興味深そうに見つめる小学生や、昔を思い出して涙を浮かべる高齢者の姿を見るにつけ、丸岡館長はこんな思いを強くしている。「後世に残したい。最も変化が大きかった昭和のモノを残さずに、他に何を残すんじゃ」。その思いは、もう趣味の域を超えている。【平本泰章】

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.