starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

レーザー光は牧場の味方 天敵カラス退治、学習能力惑わす工夫


 牧場の乳牛がカラスに襲われる被害を防ごうと、レーザーを使った撃退法が島根県内の牧場で効果を上げている。山陰パナソニック(島根県出雲市)などが開発した製品で、カラスが嫌がる緑色の光を牛舎内に照射しカラスを追い払う仕組み。この防鳥レーザーを導入する動きは県外にも広がっている。

 島根県西部の山あい、浜田市三隅町にある浜田メイプル牧場。牛舎の柱に設置された機械から発せられる緑色のレーザーが、縦横などの線で天井や牛の体を照らす。牛舎内にカラスの姿は見当たらなかった。同牧場の小松原育三場長は「カラスが少なくなっているのは間違いない。牛の安全は確保されつつある」と満足げだった。

 このレーザー装置は山陰パナソニックとイベントなどでレーザーを扱う東京の企業が共同開発した。一見、防犯カメラのような見た目だが、首を振りながら丸や四角、リボンなど約10種類の形のレーザーを放射する。半径約30~35メートルまで届き、牛舎内をまんべんなく照らせるように30メートル間隔で設置されている。5分間隔で照射され、視界に緑の光が入ることを嫌ってカラスが逃げていく仕組みという。同牧場の牛舎には計15台が導入されている。

 年間約1万トンの牛乳を出荷している同牧場。牛舎内に飛来したカラスが食後に寝ている牛の乳房や首を突き、ストレスで乳が出にくくなったり、大量出血する深刻なけがをしたりと被害に頭を悩ませていた。これまでもロケット花火などの「音」でカラスを撃退する対策を取っていた。しかし、小松原場長は「一瞬は逃げても(音を)聞き慣れてすぐに戻ってくる。何かしないといけないから効果がなくてもやっていた」といい、学習能力の高いカラスの存在は牧場にとってまさに天敵だった。

 そんな中、山陰パナソニックのソリューション営業グループの農業担当、渡部昭彦主任は各地の牧場がカラス被害に苦労していることを耳にしていた。

 渡部主任は「緑色のレーザーの光によってカラスは自分が攻撃されているような意識に変わる」という情報をインターネットなどで集めた。「単純なレーザーではなく、カラスが慣れないように形を変えたりタイミングを変えたりできるものが作れないだろうか」と東京の企業に話を持ちかけた。

 試作品が完成し22年5月から3カ月間、同牧場の牛舎でレーザー2台を使った実証実験を始めた。カメラ映像でレーザーの設置前と比較すると、カラスの数は大幅に減っていることが確認でき、同牧場にレーザーを本格導入することが決まった。小松原場長は「牛が傷つけられ乳量が落ちるのは、物価高騰で飼料も上がる中での経営に追い打ちをかける。1頭でも2頭でも助けてやりたい」と力を込める。

 レーザー装置は1台約20万円。レーザーによる効果が証明されたことで、現在は6道県の10牧場にまで機器の導入が広がっている。山陰パナソニックにとって鳥獣害対策は今回が初の試みだったが、手応えは十分だった。渡部主任は「(レーザーは)果樹園などの明るいところでは効果が薄いので、屋外でも効果があるのも考えてみたい」と農家の悩み解決に向けて意気込んでいる。【松原隼斗】

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.