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「国際ロマンス詐欺」実行役に取材 だます側の心理を1冊の本に


 マッチングアプリやネット交流サービス(SNS)でつながった相手に恋愛感情を抱かせ、金銭をだまし取るロマンス詐欺の実行役に迫った「ルポ 国際ロマンス詐欺」(小学館新書、1100円)が話題だ。被害に遭った人の視点を中心としたものはこれまでもあったが、この本には海外にいる実行役に直接取材したエピソードが盛り込まれている。1本のメッセージから多額の金銭をだまし取る犯罪に、どんな人物が関わっているのか。真相に切り込んだ一冊となっている。

 著者はノンフィクションライターの水谷竹秀さん(48)。フィリピンの新聞社で勤務経験があり、「日本人と外国人」を長年の取材テーマに据え、恋愛関係にまつわる人間模様にも数多く接してきた。

 2020年に始まった新型コロナウイルス禍は人々に「距離」を取ることを求め、マッチングアプリなどのネットを活用した男女の出会いの場が増えた。国際ロマンス詐欺の被害もその中で、多く報じられてきた。ただ、被害者や実行役を深く掘り下げたものは少なく、「だったら自分が」と取材にかかったという。

 事態が大きく進展したのは取材を始めて半年ほど過ぎた頃。自身のフェイスブックにある日突然「Hello! Dear Friend」というメッセージが届いた。送り主の「自称米兵女性」とたわいもないやり取りをしていると、相手は恋愛感情をちらつかせ、あの手この手で金銭を要求してきた。「ロマンス詐欺の典型」と感じた。要求をかわしながらやり取りを続け、しばらくして自分がジャーナリストであることを伝えた。すると「私は本当はナイジェリア人の男だ。友達になってほしい」と打ち明けられた。

 ナイジェリアで何が起きているのか。現地に赴くと、大学生らが生活費稼ぎのためにロマンス詐欺に手を染める実態を目の当たりにした。詐欺で得た金で裕福な生活を送ることに憧れを抱く、こうした若者たちは現地で「ヤフーボーイ(ガール)」と呼ばれていた。

 何人ものヤフーボーイらに取材を重ねるが、罪の意識は一様に低かった。彼らは「先進国の人はお金を失っても、国が支援してくれる。それが見込めない僕らよりは困らないはずだ」などと話したという。

 水谷さんはヤフーボーイらからターゲットとしてどんな相手を狙っているのかも聞き出し、手口とともに著書で紹介している。

 「インターネットの普及で、途上国の人は自分たちの貧しさがより可視化され、裕福な国の人から金をだまし取っても別にいいじゃんっていう意識が芽生えたのではないか」と水谷さんは話す。そして、こうも指摘する。「一方で、日本では裕福であっても愛に飢え、孤独で日常に満たされていない人も多い。思惑の違うそんな両者をSNSはいとも簡単につなぎ、ロマンス詐欺が生まれたのではないか」【林田奈々】

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