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爪と心に彩りを 広がる「福祉ネイル」、高齢者ら会話弾み生活改善も


 ネイリストが福祉施設を訪問し、高齢者や障害者にマニキュアを施す「福祉ネイル」が注目を集めている。ネイリストとの対話を通じた認知症予防や、身だしなみを整えることで入所者の生活環境の改善につながるといい、三重県内でも広がりつつある。【寺原多恵子】

 「きれいやなあ。風鈴が良いね」。社会福祉法人弘仁会(名張市)が運営する、津市の特別養護老人ホーム「美里ヒルズ」で8月、入所者の永田玲子さん(90)は、ピンクのマニキュアが塗られたばかりの自分の指先を何度も見つめた。中指には、風鈴が描かれている。永田さんを担当した松阪市の福祉ネイリスト、岡林華奈子さん(42)は、「音が聞こえてきそうでしょう」と笑顔で応じた。

 岡林さんは美里ヒルズを月に1度訪れ、1人あたり30分ほどかけて、入所者8~9人にネイルを施す。相手と話をしながらマニキュアの色と、指に描くモチーフをサンプルを見せながら決める。サンプルには、犬やネコなどの動物や風鈴や花火、すいかなど季節に合ったものが並ぶ。

対話が認知症予防になる

 こうしたモチーフが、高齢者の過去の経験から記憶を引き出すカギとなる。かつて飼っていたペットを思い出させたり、指に絵を描きながら「花火、見に行きましたか」などと話しかけて、昔の思い出を語ってもらう。こうした対話は「回想法」と呼ばれる心理療法の一つで、脳の活性化を通じた認知症の予防につながるとされる。

 福祉ネイリストは、「日本保健福祉ネイリスト協会」が2015年から始めた新しい資格だ。協会によると、8月末で全国に約1900人が資格を持ち、県内では約25人が認定を受けた。

 岡林さんは、18年に資格を取得した。ネイルの施術を通じて、一人一人の高齢者とじっくり向き合えることに魅力を感じた。最初は質問しても反応がなかった高齢者が、ネイルの回数を重ねるうちに会話ができるようになったこともあったという。施術の対象は男女を問わない。「楽しいし、皆に喜んでもらいたい。利用者から私も元気をもらえる」とやりがいを感じている。

 外見を整えることで、高齢者自身の生活態度の変化にもつながっている。美里ヒルズの生活指導員、刑部(ぎょうぶ)慎矢さんは、「鏡を見る回数が増えて、髪をといたり身だしなみを整えたりするようになった。衛生面でも効果があった」と入所者の変化を話す。

ネイルに合わせて服を選ぶことも

 また、それまで「何でもいい」と、職員に着る服を選ばせていた人が、ネイルの色に合わせて自分で服を考えるようになったこともあった。「いくつになっても自分で自分のことを決められるように、施設はそのサポートを大切にしている。福祉ネイルはそれに一役買っている」と導入の手応えを語る。

 おしゃれは生きる上で必ずしも必要というわけではないため、施設での優先順位はまだそれほど高くない。だが、福祉ネイルは高齢者の心身の機能維持につながっており、岡林さんは認知度の向上を願う。「県内で福祉ネイルがより広まり、年齢や障害に関係なくより多くの人が自分を大切にして、おしゃれを楽しんでほしい」と話す。

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