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モスクワで相次ぐドローン攻撃 “見えない敵” 募る市民の不安


 ウクライナで「特別軍事作戦」を続けるロシアは8月に入ってから、首都モスクワやその近郊でドローン(無人機)による攻撃を繰り返し受けるようになった。危険が次第に身近に迫る中で、市民はどのような感情を抱いているのか。現場で話に耳を傾けると、微妙な変化を感じた。

 モスクワでは5月初旬、中心部の大統領府がウクライナ軍によるドローン攻撃を受けたと発表されるなど、飛来が始まった。その後も首都周辺ではドローン攻撃が続いた。しかし7月末、記者が墜落現場の近くで住民に話を聞いても「見せかけの攻撃だから怖くない」(25歳の男性)などといった反応が少なくなかった。攻撃はいずれも夜間に起こり、人がいない商業施設が狙われることも多かった。市民の緊張感はさほど高くないと感じていた。

 ところが8月11日にモスクワ西部で起きたドローン攻撃は平日の午前10時半に発生した。ロシア軍はこれを防御し、森林に墜落させたと発表した。死傷者はなかった。

 記者は11日正午ごろ、現場に着いた。ドローンが墜落した森林から遠くない場所に病院や集合住宅が建ち並ぶ。近くに住む35歳の女性は当時の様子をこう語った。「20階の部屋からでも煙が上がっているのが確認できた」

 「怖くなかったのか」と尋ねると、女性は「予想していなかったから、墜落したときの音は怖かった」と表情を曇らせた。

 女性のリュボービさん(92)は大きな音を聞き、近くにある自宅から現場に駆けつけた。「怖くなったわけではないが、心配になったから見に来た」と複雑な心境を明かした。

 近くにいた男性2人組に怖かったかどうかを聞くと「当然怖い」「怖くはない」と答えは分かれた。

 モスクワとその近郊では8月に入ってから、1、9、10、11の各日にドローンの飛来が伝えられた。ロシア国防省はいずれもウクライナ軍によるものだと断定。全機を迎撃したり、制御不能にしたりして防ぎ、死傷者はなかったとしている。

 ただ、住民の間には疑心暗鬼が広がる。

 ウクライナ領からドローンでモスクワ一帯を狙う場合、700キロ前後を飛ばす必要がある。ウクライナ軍が長距離飛行用のドローンを開発したとの報道もあるものの、ウクライナ軍ではなく、何者かがロシア領内から攻撃しているのではないかと考える市民もいる。

 モスクワの代表的な商業施設「モスクワシティー」では、8月1日までの3日間で計3回のドローン攻撃を受けた。ビルの管理に携わる男性は1日未明の攻撃直後、ビルの向かいに全地球測位システム(GPS)の受信機が落ちていたのを見つけ、撮影した。ドローンに搭載されていたものであれば、飛行するうえで一定の負荷がかかる。男性は写真を記者に見せ「遠いウクライナ領からドローンを飛ばせるわけはない」と話した。

 真相が分からないと、かえって不安が募る。モスクワ近郊では8月上旬以来、工場で爆発が起きたり、自動車整備施設や倉庫で火災が発生したりする事案も相次ぐ。

 今月24日にはロシアが特別軍事作戦を始めてから1年半を迎える。ウクライナの前線で戦闘が収束していない中で、モスクワやその近郊で不穏な事案が続き、市民の間にも危機感がじわりと広がっているのは間違いなさそうだ。

 92歳のリュボービさんは、10代前半の頃に第二次世界大戦(1939~45年)を体験した。前世紀と今を比べてどう思うかを尋ねると、こんな答えが返ってきた。「今世紀こそは、平和に暮らしたいと願っているのだが」【モスクワ大前仁】

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