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川の砂からきらきら輝くグラス 工芸品「仙台ガラス」に集まる注目


 凹凸のある渋い緑色のグラスを光にかざすと、まるで水面のように表面がきらきらと輝いた。仙台市太白区秋保にある「海馬ガラス工房」の村山耕二さん(56)が作る「仙台ガラス」の原料は同市を流れる広瀬川の砂だ。近年、仙台を象徴する工芸品の一つとして注目を集めている。

 仙台ガラスは江戸時代後期につくられていたが、現在は技術が失われてしまったという。村山さんは工房を立ち上げた1996年、市博物館で目にした仙台ガラスのかんざしからインスピレーションを受け、仙台を代表するガラス製品を作ろうと思い立った。

 文献を片っ端から調べたものの製法は分かずじまいだった。そこで考えついたのが仙台のシンボルとして親しまれている広瀬川の砂を溶かして作品を作ることだった。通常、ガラス製品を作る際は原料から不純物を取り除く工程があるが、村山さんはそのまま使うことで着色をせずに自然な色を出すことに成功。茶色がかった渋みのある緑は、くしくも仙台の愛称「杜の都」を象徴する色となった。

 同じ川でも砂を採取する場所が異なれば、製作時期によって色が微妙に異なる。現在は2015年に開業した市営地下鉄東西線の架橋工事で出た砂を使用。当初よりも、緑の鮮やかさが増しているという。「時代とともに変化する地域の様相を色から感じ取ってほしい」と思いを語る。

 作品に使用するのは広瀬川の砂だけではない。モロッコのサハラ砂漠から調達した砂は明るい緑色、村山さんの故郷・山形県の月山で採れた砂は涼しげな青い色味が出る。月の砂を再現した模擬砂(シミュラント)で作ったガラスは黒くなるが、太陽光に照らすとオレンジ色を帯びたという。

 作品に込めるのは、砂のある土地の歴史やそこに暮らす人々の思いだ。14~15年には、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県の南三陸町や七ケ浜町で、住民が思い出の場所から持ち寄った砂を使ってガラス玉にする「大地を溶かしてプロジェクト」を開催。地域の記憶を色で表現し、作品に閉じ込める意義を改めて実感した。

 工房の名前の由来は記憶をつかさどる脳の部位「海馬」から。村山さんは「当初は『記憶に残る仕事がしたい』という単純な思いからつけた名前に過ぎなかった」と振り返る。今では作風と相まって、その意味も変化してきている。今後の展望は「全国47都道府県を象徴する場所の砂で作品をつくること」。土地の「色」を探して--。探究心は尽きることがない。【遠藤大志】

仙台市

 人口約109万人。東北では唯一の政令指定都市。秋保地区は宮城県内有数の温泉地で「仙台の奥座敷」として多くの観光客が訪れる。

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