starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「はだしのゲン」連載開始50年 「読み継いで」NPOが普及活動


 広島原爆の惨状を描いた漫画「はだしのゲン」が今年、雑誌の連載開始から50周年を迎えた。戦争の悲惨さや平和の尊さを学べる“教材”として国内外で広く読まれているが、漫画を外国語に翻訳したり、国内外に広めたりする活動には、石川県のNPOや女性らが重要な役割を担った。ウクライナを侵攻するロシアが核兵器の使用をちらつかせるなど核の脅威がいまだなくならない中、関係者は「今こそ『ゲン』を読んでほしい」と訴える。【阿部弘賢】

世界34カ国に寄贈

 「ゲン」(全10巻)の日本語版や外国語版を国内外に普及する活動をしているのは、2012年に設立された金沢市のNPO「はだしのゲンをひろめる会」(ひろめる会)。約10年間の活動で、日本を含む34カ国に日本語、英語、ロシア語、中国語、アラビア語などの各国語版を約400セット寄贈してきた。今年は全国50カ所の公立図書館に希望を募り、5日までに45館に贈った。日本語版と英語版を受け取った北海道釧路市中央図書館の担当者は「漫画はいろんな人が手に取りやすい。市民にも読み継いでいってほしい」と話す。

 NPO設立時には、亡くなる直前の著者・中沢啓治さん(12年に73歳で死去)から、「ゲンは地球上を何百回、何千回もはだしでかけめぐり、愚かな戦争と核兵器を無くすためにガンバル決心でございます。(中略)皆さん、ゲンに力を貸してやってください」と書かれたメッセージも届いた。ひろめる会事務局長の神田順一さん(73)は「漫画には原爆だけでなく、戦争に巻き込まれていった歴史も描かれ、戦争を止める責任があった大人たちの姿も見えてくる」と指摘する。

7年かけ全巻完成

 「ゲン」が海外に広まる契機となったのが外国語への翻訳だ。1970年代から翻訳の動きはあったが、最初に外国語訳を全巻完成させたのが、ひろめる会元理事長の浅妻南海江さん(80)=金沢市=が立ち上げた市民グループ「プロジェクト・ゲン」だった。

 ロシア語翻訳の仕事をしていた浅妻さんは、ロシア人が原爆の実像を知らないことにショックを受け、ロシア語版の制作を決心。ロシア人の協力も得ながら翻訳を進めると同時に、パソコンで1ページずつ画像を取り込んで吹き出しを白く処理するなどの編集作業も行った。本を読み進める方向が違うため絵を左右反転させる必要があったが、着物の合わせや箸の持ち手は「日本の文化を正確に伝えたい」と一つずつ元に戻すなど気の遠くなるような作業を重ね、7年がかりで2001年に完成させた。

 その後、英語のできる知人女性らに声を掛け、英語版も約10年がかりで09年に完成。英語版ができたことで出版社や外国人が他言語に翻訳するのも容易になり、これまでに24カ国語で出版された。現在もモンゴル人大学生がモンゴル語への翻訳を進めているという。浅妻さんは「もうゲンは何語でもしゃべることができる。世界中のたくさんの若い人たちに『ゲン』を読んでもらいたい」と期待する。

削除に反対の声も

 今年に入り、広島市教委が小学校の平和教材から「ゲン」の引用部分を削除する方針が報道され、波紋が広がった。ひろめる会が継続を求める声明を出すなど、「ゲン」の翻訳・普及に携わった人たちからも反対の声が上がった。

 今春、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、「ゲン」の国際的な広がりや果たしてきた役割などを伝える配信を始めた中国語版の翻訳者、坂東弘美さん(75)=名古屋市=もその一人。「中沢さんの怒りが本物だから海外の人にも伝わる。ゲンが世界中の人を励ましている事実に目を向けてほしい」と話した。

著者半生語る映画上映 金沢で12~18日

 雑誌連載50周年を記念し、12~18日には中沢啓治さんの生い立ちや「ゲン」を描くまでの半生を語った映画「はだしのゲンが見たヒロシマ」(2011年、石田優子監督)が、金沢市の映画館「シネモンド」で上映される。

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.