25日に辞任を表明した中古車販売大手ビッグモーター（東京）の兼重宏行社長は、1976年に山口県岩国市で創業した小さな会社を一代で年商約5900億円、従業員約6000人を擁する大企業に急成長させた。トップの辞任に発展した事態を、従業員や地元・岩国の住民はどう受け止めたのか。
国の名勝「錦帯橋」にほど近い、山裾を走る県道沿いにあるビッグモーターの店舗が、かつての本店だ。「岩国が創業地とは知っていたが、不正をしていたなんて」。店の近くに住む女性は、あきれた様子で話した。
同社のホームページなどによると、兼重氏は工業高校を出て市内の整備工場に勤めた後、76年に「兼重オートセンター」を創業。80年に社名を「ビッグモーター」に変え、増資や買収を経て全国に店舗を増やした。本店は今、東京都心の六本木ヒルズにある。
市内の自動車整備工場の関係者は、兼重氏について「とにかく仕事をどんどん取ってくるやり手で、よくあそこまで事業を広げたと思う」と振り返り、「一度失った信用は取り戻すのは難しいのでは」と淡々と語った。
岩国市内で中古車販売を手掛ける60代男性は「きちんと顧客管理をして、お客さんのためを思って仕事をしていれば業界全体への影響はないだろう」と冷めた声で語った。
従業員からは戸惑いの声が聞かれた。中国地方の店舗で働くビッグモーターの男性従業員は「今回の報道で初めて知ることばかりで、不正は知らなかった」と話す。その上で「お客様の車なので傷付けていたら本末転倒でショックだ。まっとうにやって、信頼を回復していかなければならない」と語った。九州北部の店舗に勤める女性は「報道をみて会社がどうなるか心配している」と話した。【長岡健太郎、城島勇人、大山典男】
