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「10年たった。もう笑ってほしい」 周南5人殺害、集落の変化


 山口県周南市の金峰(みたけ)地区の郷集落で、保見光成死刑囚(73)が集落に住む12人のうち5人を殺害し、住宅に放火した事件から21日で10年を迎える。現場となった山奥の集落は、さらに過疎化が進む。その一方で、「もう10年経った。(被害者らにも)笑ってほしい」と焼け跡に被害者の数と同じ5本の桜を植え、学生や近隣住民らを巻き込んで地域づくりをする動きもある。【福原英信】

 17日、住民団体「防長の吉野をつくる会」の地域活動に、周南公立大(周南市)の学生ら約20人が参加した。2022年、同大福祉情報学部で教授を務めていた鏡裕行さんが偶然、金峰を訪ねたことが縁で年数回、同会の地域活動に学生が参加している。今回は、23年2月に学生らと植えたクヌギと桜の周りで雑草を刈った。

 同会は25年以上前から、「桜の名所として名高い奈良の吉野山のような桜の里を、金峰につくりたい」との思いで3500本以上の植樹を続けてきた。事務局長の尾崎行雄さん(68)は12年前に活動に参加。事件の被害者となった山本ミヤ子さん(当時79歳)、石村文人さん(同80歳)、河村聡子さん(同73歳)の3人も同会の中心メンバーだった。事件の10日前にあった同会の草刈りには石村さんも参加していた。

 事件当日、尾崎さんは消防団の一員として消火活動にあたった。「ものすごい勢いで火が上っていた。そうしたら、別の家も燃えていると聞いた。当時は消火に必死で、事件だとか考える余裕はなかった」と振り返る。

 一方、事件では保見死刑囚宅に張られていた「つけびして 煙(けむ)り喜ぶ 田舎者」と書かれた紙が異様さを印象づけ、被害者や遺族、集落の住民に対して「村八分にして追い込んだ」といったいわれのない中傷もあった。過疎化はさらに進み、当時12人いた郷集落の住民は3人に。事件前から花見や仕事で集落を訪ね、今回の草刈りにも参加した椋木幸子さん(74)は「昔より外を歩く人が少なくなった」と変化を実感する。

 同会は20年4月、「金峰に来たときにくつろげる場所を」と、ガーデンハウスを開設した。岡崎麻衣さん(46)は「尾崎さんに誘われて地域活動に参加するうちに、山の中に居場所ができた」。尾崎さんは今春、「事件から10年がたち、もう笑ってほしい。5年、10年して桜が咲いたら、(被害者が)笑っているように見えるはず」と、被害者の山本さんの自宅があった焼け跡に桜を植えた。

 金峰には、菜の花やツツジなど四季折々の花が咲き誇る。尾崎さんは「過去は変えられない。金峰を目的地にして来る人が増えるように地域づくりをしたい」と前を向く。草刈りに参加した同大2年の河野沙智斗さん(19)は「来る前は事件のイメージから金峰に行くのが少し怖かった。実際に訪ねて、この場所の良さを知った」と話した。

山口・周南5人殺害事件

 2013年7月21日午後9時ごろ、周南市金峰の郷集落で貞森誠さん(当時71歳)、山本ミヤ子さん(同79歳)の住宅が相次いで全焼。焼け跡から貞森さんと妻喜代子さん(同72歳)、山本さんの計3人の遺体が発見された。翌22日、近くの石村文人さん(同80歳)と河村聡子さん(同73歳)がそれぞれ自宅で頭などを殴られて殺害されているのが見つかった。保見光成死刑囚(73)が殺人、非現住建造物等放火容疑で逮捕・起訴され、15年7月に山口地裁で死刑判決を受けた。16年9月に控訴棄却、19年7月に上告も棄却され、死刑が確定した。22年12月、弁護団は再審請求を認めなかった広島高裁決定を不服として最高裁に特別抗告した。

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