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秋田の大型ウサギ、40年前に北朝鮮へ 食用?万景峰号で海渡る


 「秋田犬」「比内地鶏」と並ぶ秋田県固有の動物で、県の内陸部で家畜として飼育されてきた「ジャンボウサギ」が40年前の1983年、秋田から北朝鮮へと送られていた。当時を知る複数の関係者が明らかにした。県内では飼育農家が減少し、今や存続すら危ぶまれるウサギだが、その価値は国外でひそかに注目されていたという。何のため、どんな経緯をたどったのか。証言を追って産地へと足を運んだ。

 北朝鮮へ送られたのは秋田県の旧畑屋村(現・美郷町)を中心に飼育され、成長すれば体重が10キロ近くにもなる「畑屋うさぎ」。ジャンボウサギの源流とされ、終戦間もない49年には米国にもつがいが親善目的で送られたというが、詳細は明らかではない。

 美郷町の農協関係者などによると、この地域では海や川の魚が限られ、動物性のたんぱく源が少なかったことから、1891(明治24)年に香川県から食用の小家畜としてウサギが導入された。大正時代には旧日本軍がその毛皮の多くを防寒用として買い取ったとされる。

 その後も大型化の改良が続けられ、ジャンボウサギは「日本白色種の秋田改良種」として地元で知られるようになった。食生活の変化などの影響で、近年では飼育数が大幅に減っているが、現在もこの周辺地域では伝統食としてウサギの肉を鍋料理などにして口にする習慣がある。

1羽6400円で50羽「親善目的」

 こうした秋田の家畜ウサギの事情を知った北朝鮮側は83年夏に雄10羽、雌40羽を購入。その後、貨客船「万景峰号」にウサギを積んで日本海を渡ったという。金日成主席(当時)の70歳の誕生日の祝賀が目的とされ、秋田県からはウサギに加えてリンゴやブドウの苗木も送られたという。

 当時の取引を記録した手書きの精算書も残っていた。それによると、出荷されたのは83年8月5日。旧畑屋農協の幹部が出荷者として記され、販売金額は50羽で31万9570円(1羽あたり約6400円)、運賃は6万2400円だったという。

 取材に応じた関係者によると、県内の有力政治家を通じ、北朝鮮側から「ウサギを送りたいので売ってくれないか」と農協に打診があった。農協は親善を目的に、ウサギを入れるための箱50箱を急いで作り、当時の県職員もウサギの体調検査に協力したという。

 これほど大きなウサギは北朝鮮には元々生息しておらず、貴重な存在として注目されたという。近年の消息は不明だが、出荷から約3年半後の87年に秋田の地元自治体が発行した広報紙には、現地での畑屋うさぎの事情について、朝鮮総連関係者に取材した記事が掲載された。

 それによると、首都・平壌直轄市に隣接する平安南道の小中学生が自宅で飼育し、数も増えたという。「一人で30匹くらい飼っている人もいるそうです」との記載もある。

 前出の関係者は「ウサギは近くに草が生えていれば飼える動物なので、他の家畜と比べればそれほど手間はかからない。北朝鮮の食料不足がたびたび伝えられているが、最終的には家畜として繁殖させ、食用にすることが大きな目的だったのかもしれない」と話す。【工藤哲】

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