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スウェーデン加盟前進、NATOに実利 実は北欧きっての軍事大国


 スウェーデンのクリステション首相は10日、北大西洋条約機構(NATO)加盟が事実上決まったことを受け、「待ち望んでいた瞬間だった。わが国は非常に大きな一歩を踏み出した」と述べた。ロシアによるウクライナ侵攻以降、共に加盟を申請していたフィンランドは今年4月に先に正式加盟を認められ、スウェーデンだけがいわば「取り残された」形となっていた。念願の加盟がほぼ確実になったことで、今後の焦点は現実的なロシアの脅威への対応に移る。

 大きな意味を持つのは地政学的な変化だ。スウェーデンが正式加盟した場合、バルト海沿岸のほぼ全域がNATOの勢力圏となる。特にロシアにとって痛手なのは、ロシアの飛び地カリーニングラード州がNATO側に完全に「包囲」されることだ。

 NATOにとっては、スウェーデンの軍事力も大きな魅力に映る。スウェーデンは19世紀のナポレオン戦争終結後、200年以上も外国と交戦していない中立国だったが、自国製戦闘機「グリペン」や潜水艦を保有するなど、北欧きっての軍事大国でもある。総兵力は約1万5000人。2025年までの5年間で国防予算を40%引き上げる計画も進めている。米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」によると、サイバー能力も欧州最先端の国の一つという。

 北方の海域を熟知する強みもある。欧州メディアによると、バルト海の平均水深は約60メートルで、米国の原子力潜水艦などが稼働するには浅すぎるという。だがスウェーデンは20世紀初頭からバルト海で潜水艦を運用してきた経験がある。28年までには新世代型の潜水艦群をバルト海に展開する予定で、スウェーデン第1潜水艦隊のリンデン司令官はロイター通信に、「私たちは、NATOがこれまで持っていなかった地域の専門知識を有している」と語った。

 バルト海では昨年9月、ロシアとドイツを結ぶ海底パイプライン「ノルド・ストリーム」でガス漏れが発生するなど、海底インフラの脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されてきた。スウェーデンの加盟により、今後はこの地域の安全保障が強化されるとの期待もある。

 一方、ウクライナ侵攻前から高まっていた緊張がさらに激化する可能性もある。ロシアは16年、核弾頭を搭載可能な新型ミサイル「イスカンデルM」をスウェーデンの対岸のカリーニングラード州に配備した。こうした情勢を受け、スウェーデンは10年に停止していた徴兵制を18年に復活させた。

 スウェーデンは戦後、その中立的立場から「平和国家」のイメージを定着させてきた。特にパルメ首相(在任1969~76年、82~86年)は軍縮に取り組む国連の委員会のトップを務め、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策を厳しく批判するなど人権外交を展開してきた実績もある。NATO加盟により、長年培ってきた中立外交に影響が出る可能性もある。【ロンドン篠田航一】

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