starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

池井戸潤さんに聞く「ハヤブサ消防団」 過疎地に渦巻くミステリー


 中村倫也(ともや)さん主演のドラマ「ハヤブサ消防団」が、13日からテレビ朝日系で放送される。原作は池井戸潤さんの同名のミステリー小説(集英社)。これまでも幾多の作品がドラマ化され、舞台の多くは銀行や町工場だったが、今回は地方の消防団だ。作品が生まれた背景やドラマへの期待を池井戸さんに聞いた。【御園生枝里】

原作のモデルは出身地

 物語は、東京で暮らしていたミステリー作家の主人公・三馬(みま)太郎が、亡き父の古里であるハヤブサ地区に移住したことから始まる。地域の消防団「ハヤブサ分団」に入団し、のどかな地方で起きた連続放火事件の真相を探っていく。

 ハヤブサ地区は中部地方にある架空の町という設定だ。池井戸さんの出身地をモデルにしているという。

 「地方の最大の課題は過疎だと思います。でも、どうすればいいという答えが見つからない。解決策はないけれど、実態は書いておこうと思いました」

 祭りを続ける難しさ、寺の檀家(だんか)の減少、自然豊かな景観に突如現れる大規模な太陽光発電施設――。地方でリアルに起きている出来事が事件に絡み、物語に引き込まれていく。

 消防団員は普段は本業を持ちながら、地域で火災や地震などが起きれば現場に駆け付ける非常勤の地方公務員だ。

 作中では、消防署からハヤブサ地区までは30キロほど離れていて、「ハヤブサ分団」が初期消火に重要な役割を果たす。その活躍を臨場感たっぷりに描けたのは取材協力者の存在があったからだという。

同級生にLINEで“取材”

 池井戸さんが執筆中、地元で消防団に入っている小中学校時代の同級生らに無料通信アプリ「LINE(ライン)」で「消防車ってどうやって運転するの?」「夜回りどうなってる?」と聞くと、すぐに答えが返ってきたという。

 「消防操法大会で前の人のズボンが破れて笑っちゃったっていう部分は本当にあったことですよ。こういうくだらないことも含めて、いつかどこかで田舎の風景を絶対書いておかなきゃいけないと思っていました」

 消防操法大会は各消防団が消火活動の技術を競う大会で、ネット交流サービス(SNS)には練習の負担を嘆く声もある。物語でも、大会に向けた毎晩の練習を迷惑に思う消防団員が描かれる。

 池井戸さんは消防団の現状を「ぼくの育った町は、自分たちで火事を消さざるを得ないんですよね。だからブーブー文句を言いながらも、ほぼ全員入っているんじゃないかな」と語る。

迫力の映像に期待

 6月下旬にドラマ撮影の現場を見学した池井戸さん。「居酒屋のシーンでカメラが回っていないところで盛り上がっていました。役者さんたちに役を超えた団結力がある様子が垣間見えました」と話す。

 消火活動のシーンが楽しみだといい、「(カメラを)長回ししたと聞いたので、迫力ある映像が撮れていると思いますよ」と期待を語った。

 ドラマは毎週木曜午後9時から放送。主人公の三馬太郎を中村倫也さんが演じるほか、川口春奈さんら豪華キャストが出演する。

 原作では主人公が命の危険にさらされながらも、ある真実にたどり着く。池井戸さんは「まだドラマの脚本を全部は拝見していないんですけど、小説と違う展開になっていくので、小説を読んだ人も盛り上がってくると思います」とほほ笑み、こう付け加えた。「ドラマを見るだけでなく、小説も買ってくださいね」

いけいど・じゅん

 1963年、岐阜県生まれ。慶応大卒。98年「果つる底なき」で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2011年「下町ロケット」で直木賞を受賞。主な著書に「半沢直樹」シリーズ、「ノーサイド・ゲーム」「シャイロックの子供たち」など。

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.