starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「パートナー制度は憲法に抵触」 京都・大山町議の発言に見えた無理解


 パートナー制度は憲法に抵触するのではないか――。性的マイノリティーの成人カップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」の導入を巡り、ある町議会で、自民党議員がそう発言して反対する場面があった。結果的に制度は導入されたが、理解が進んでいない現状が浮き彫りになり、制度を求めてきた人たちは議会の抱える課題を指摘している。

 パートナーシップ宣誓制度は、性的マイノリティーのカップルに自治体が証明書を交付する。性的マイノリティーへの理解を広げる狙いがあるほか、一部の行政サービスや、携帯電話会社の家族割引などを利用できる場合もある。

 国が同性婚を認めない中、制度は全国の自治体に広がっている。東京都渋谷区とNPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)の共同調査によると、6月28日時点で328自治体が導入し、人口カバー率は70・9%に上っている。

 京都府大山崎町では2月、「多様な住民や来訪者が安心して過ごせる町になるよう、一日も早く導入を」と制度を求める陳情書が町議会に出された。提出したのは、町民の中村佳太さん(41)。地元でコーヒー焙煎(ばいせん)所を営みながら、性的マイノリティーなどについて発信を続けてきた。

 陳情書が審査された3月9日、町議会の委員会を傍聴した中村さんは驚いた。自民会派の西田光宏氏(63)が「制度には問題点もある。憲法上で抵触する可能性もある」「同性婚を男女の婚姻と同じように見るのか考えなければいけない」などと発言して反対したからだ。

 パートナーシップは、法的な効果は生じない制度だ。婚姻とは根本的に異なり、「婚姻の自由」を保障した憲法24条などに抵触するという根拠はない。しかし、他の議員からも「法的に認める制度だ」「私はもうおじいちゃんやから。私の頭ではカバーできないテーマだ」などの発言が出た。議論が深まらないまま、陳情は委員会では不採択となった。

 しかしその後、審議は異例の経過をたどる。同23日に開かれた本会議で、自民会派が一転して賛成に回ったためだ。西田氏が賛成討論を行い、「我々は性的マイノリティーの方々の人権を尊重する」「(制度の)内容に何ら異議はない」などと述べた。委員会での反対は「自民党が制度は慎重な検討が必要としているから」だとした上で、町側とのやりとりを経て「同性婚とは切り離して考えるべきとの結論に至った」と説明。陳情書は全会一致で採択された。

 これを受け、町は6月1日に制度を導入。宣誓すると犯罪や災害の被害にあった際、町条例に基づき見舞金を受け取れる。担当者は「宣誓者へのサービスは法的な制約があるが、パートナーだと公的に宣言する点に意義がある」と話す。

 西田氏は取材に対し、委員会での発言について「同性婚に付随して、制度が憲法に触れる懸念があるんじゃないかと考えた。議論する時間が短く、理解が及ばなかった」と釈明。「委員会の後、町から見解や現状を聞くなどして、会派で協議した。性的マイノリティーの人権を尊重することに反対する意向はないという結論になった」と話した。

 本会議も傍聴した中村さんは制度の導入を歓迎しながらも、経緯を振り返ると複雑な思いもある。「性的マイノリティーを巡る課題には、小さな町も向き合うべきだ。既に全国に広がっている制度を町議がよく知らないのは、問題ではないか」と指摘する。

 さらに、議会の男女の偏りにも疑問を投げかける。陳情書を審議した委員会は議員6人中5人が男性、残る1人の女性は委員長のため議決に参加しない構成だった。「ジェンダーの問題は女性の方が身近に捉えやすいのではないか。多様な人が議会に参加し、多様な声を聞いてほしい」【添島香苗】

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.