私の20代を象徴するような曲が誕生しました。「荒野に立つ」。私が「のん」になろうと思った時の気持ちやそれからどう感じてきたのか――という、誰にも語ってこなかった胸の内をシンガー・ソングライターのヒグチアイさんに書き下ろしていただいた楽曲です。
私の仕事は、スタッフさんとか、いろいろな人に支えられてこそ成立します。ただ、私はそこに自分がきちんと意志を持って介在していたい。
大変で苦しくても、スタッフと意見を出し合って自分の意見やアイデアを言って、責任を自分で持つという形が向いている。
でも、そういうやり方は、会社に所属するいち俳優だと「わがまま」になってしまうこともあります。
だから独立して本名の能年玲奈から「のん」として活動するようになりました。
実際、のんになって自分でプロジェクトを立てて、音楽レーベルを立ち上げたり映画を監督したり、アップサイクルのブランドを始めたりして、普通だったらやれないことに挑み続けています。
それでも、時々立ち止まって、このやり方でいいんだっけって、悩むこともあります。
それに私の場合、「その道に立たされた」というよりも、自分で火を解き放って荒野をつくり、そこを突き進んでいる……。
そんなふうに、ヒグチさんに自分のことをさらけ出し、曲をつくってもらいました。
気を使いながらしか言えなかったことが、「荒野に立つ」って言うと、なんだか堂々としていられる。
知っているはずの自分の人生を、まるで他人のように客観視してストーリーにしたミュージックビデオも、自分で監督して作りました。
こういう話をするのは嫌だったんです、これまで。でも、私は役者の時はその役の弱さや抱える痛みを大事にして演じます。
強さやポジティブさに裏付けされる、弱く脆(もろ)い自分。それを音楽でも表現できて、俳優、アートと、根っこをつなぐことができたなって思っています。
のん
俳優、創作あーちすと。1993年生まれ。6月28日に「荒野に立つ」を最終曲に収録した2枚目のアルバム「PURSUE」を発売。
=ウェブサイトでは原則毎月第4火曜日に公開します。