ウクライナへの「特別軍事作戦」を続けるロシアのプーチン大統領は16日、ウクライナ軍が同国南部や東部で続けるロシア軍への反転攻勢を撃退していると強調した。ウクライナ軍が「どの地点でも目的を達成していない」として、「ウクライナの(勝利の)チャンスはない」と断言した。
ロシア北西部サンクトペテルブルクで開催中の経済フォーラムでの演説後、質疑応答で発言した。プーチン氏は、露軍がウクライナ軍の戦車186台や装甲車418台を破壊し、ウクライナ軍の犠牲者がロシア軍の10倍に上るとも述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領について尋ねられると「ゼレンスキー氏はユダヤ系でないと聞いている」と主張した。ゼレンスキー氏は実際にはユダヤ系。プーチン政権は、ウクライナの「ネオナチ」が続けてきた差別的な行動を阻止する狙いで「特別軍事作戦」を開始したとしている。ゼレンスキー氏が、ナチスの迫害対象であるユダヤ系であれば矛盾が生じるため、その血筋を否定したとみられる。
サンクトペテルブルクの経済フォーラムは、ロシア国内で最も重視されてきた経済イベント。「特別軍事作戦」が始められる前には、当時の安倍晋三首相(故人)や、マクロン仏大統領ら西側主要国の指導者が参加した年もあった。今回はアルジェリアやアラブ首長国連邦(UAE)、アルメニアの首脳らが参加した。
フォーラムでは、ロシアが「非友好国」に指定した国のメディアの現地取材を許可しなかった。【モスクワ大前仁】