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営農再開へ手探り 復興拠点でコメ栽培 高齢化など課題 福島


 東京電力福島第1原発事故を受けて6町村に設けられた特定復興再生拠点区域(復興拠点)で、コメの栽培が試みられている。各自治体は出荷制限の解除を目指すが、田んぼの再生と維持は手探りで進められている。【肥沼直寛】

 「鬼みたいな顔してっぞ」「もう、めいっぱい」。初夏の日差しが降り注いだ5月中旬、大熊町熊にある田んぼに約30人の町民らが手で苗を植えた。植え終わると、田んぼのあぜに座り込み、タオルで額を流れる汗を拭っていた。

 出荷制限の解除による営農再開に向けたコメの栽培には、試験栽培と実証栽培という二つの段階がある。試験栽培は、収穫したコメの放射性セシウム濃度を計測するなどして、全て廃棄する。実証栽培では、全量全袋検査で国の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回れば、出荷もできる。

 福島県大熊町は2020年にコメの試験栽培を始めた。22年6月に復興拠点の避難指示が解除され、コメの栽培4年目の今年は実証栽培に移った。過去3年間に収穫したコメは、抽出検査で国の基準値を下回った。町によると、今年度は市場への出荷予定はないものの、町のイベントなどで振る舞う予定だという。

 復興拠点は22年6月以降、避難指示が順次解除され、今年5月1日の飯舘村長泥地区が最後の解除となった。コメについて今年度、大熊、富岡、葛尾の3町村で実証栽培が行われ、浪江、飯舘の2町村で試験栽培が始まった。双葉町は21年度に試験栽培に取り組んだが、水路などの整備が進まないため、今年度は実施しないという。

 阿武隈山地の中腹に位置する葛尾村は21年、拠点内で特に線量が高かった地点を選び、試験栽培を始めた。試験栽培2年目と、実証栽培に移った今年度までにそれぞれ場所を変え、計3地点で栽培している。村の担当者は「山が除染されていない状況で、沢を通じて放射能の影響がないかという懸念もあった」と説明する。これまでの検査で基準値超えは確認されていない。

 原発事故被災地の農産物への風当たりは強く、事故前の就農者の高齢化も進む。双葉町を除く5町村で直近の作付け面積は計約575ヘクタール。単純な比較はできないが、帰還困難区域を含めた5町村全域では、事故前の2割にも満たない。ある自治体の担当者は「担い手がいるのか分からない状況で、どこまで体制を整えるのか」と漏らす。農地を集約し、農業法人や外部人材への貸し出しを探る動きもあるが、多くの地権者が県内外に避難している現状では、意向調査もままならない。

 大熊町農業委員会会長の根本友子さん(75)は「先祖から引き継いだ土地には思い入れがあり、貸すことに抵抗がある人もいる」と話す。一方、「農地を荒らしたままにするわけにもいかない」とも言葉を継ぎ、今後の農地活用に頭を抱える。

 県は16年度から被災12市町村を対象に営農再開を支援している。農機具やパイプハウスといった施設の整備などにかかった費用について、その4分の3を原則1000万円まで補助する。21年度は99件の計画を承認し、計約5億3800万円を補助した。

復興拠点のコメ栽培状況(2023年)

町村  栽培状況     避難指示解除

葛尾村 実証栽培1年目  22年6月

大熊町 実証栽培1年目  22年6月

双葉町 21年に試験栽培  22年8月

浪江町 試験栽培1年目  23年3月

富岡町 実証栽培1年目  23年4月

飯舘村 試験栽培1年目  23年5月

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