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長野立てこもり 警察官銃撃の直前「容疑者は笑み浮かべていた」


 長野県中野市江部で起きた立てこもり事件では、現場にパトカーで駆けつけた警察官2人が青木政憲容疑者(31)に銃で撃たれたとみられ、死亡した。農作業中にその様子を目撃した近くの住民は「(政憲容疑者は)笑みを浮かべながらパトカーに向かっていった」と証言した。

 「人が刺された」。25日午後4時20分ごろ、造園業の男性(63)が畑仕事をしていると、隣の畑で作業をしていた知人の妻が慌てた様子で駆け寄ってきた。そばには、近くに住む村上幸枝さん(66)が倒れていた。男性はすぐに119番した。

 間もなく1台のパトカーが到着した。村上さんに心臓マッサージをしながら、パトカーを見ていると、銃を持ち、腰にサバイバルナイフをぶら下げた政憲容疑者が近づいていくのが見えた。笑っているようだったという。

 男性は、政憲容疑者のことを野球に打ち込んでいた小学生のころから知っていた。だが最近は消防団やお祭りなど地元の集まりにも参加しなくなっていた。「コミュニケーションが苦手な感じで、あまり笑っているところを見たことがない。だが、あのときは初めて見るような笑みを浮かべていた」

 その直後、「パン、パン」と乾いた銃声が2回響いた。「逃げろ」。隣の畑で作業をしていた知人が叫んだ。

 男性はしばらく時間をおいてから、パトカーのところに戻った。運転席側の窓ガラスが割れ、警察官2人がぐったりとしていたが、首はまだ少し動いていた。

 「助けてやって」。応援で駆けつけた警察官にそう絞り出すのがやっとだった。知人によると、村上さんが刺された後、知人が政憲容疑者に声をかけたら「殺したいから殺した」と答えたという。

 男性の脳裏には銃を手にパトカーに向かっていた政憲容疑者の表情が焼き付いている。「無言で、ただ笑っているようでした」【菅健吾】

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