starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

全国優勝して去る…警部はレジェンドゲーマー 見つけた新たな道


 対戦型格闘ゲームの愛好家の間で「レジェンドプレーヤー」として知られた現役警察官がいる。警察官になったのを機にゲームの世界から離れて約20年。今は勝負師だった当時とは違う気持ちでコントローラーを握る。

人生を変えたゲーム「ヴァンパイア」

 「岐阜のレジェンドプレーヤー」「ミスター・ヴァンパイア」「最高連勝記録198」――。インターネットでこの人の名前を検索すると、こんな書き込みが出てくる。

 岐阜県警情報管理課の平井伸介警部(44)が、格闘ゲームの魅力にとりつかれたのは中学時代。地元岐阜市のゲームセンターで、さまざまなキャラクターが多彩な技を駆使して戦う「ストリートファイターⅡ」をプレーしたのが始まりだった。

 「キャラクターの手足を自由に動かせる操作感や音・映像が鮮明で衝撃を受けた」。ゲームセンターには毎回行列ができ、1時間に1回しかプレーできなかったが、順番待ちも苦にならなかった。

 さらに高校時代、「人生を変えた」ゲームと出会う。吸血鬼や狼男(おおかみおとこ)など伝承上のモンスターを操る「ヴァンパイア」シリーズだ。これまでの格闘ゲーム以上にプレーヤーの操作テクニックが勝敗に直結すると感じ、週の大半はゲームセンターに通って毎回2時間ほどの「練習」を重ねた。

 高校1年の時にヴァンパイアの全国大会に出場し、約500人のトーナメントを勝ち抜き初代全国チャンピオンに輝いた。高校卒業後、名古屋市の情報処理専門学校に進み、パソコンのシステム開発を手掛ける岐阜市の会社に就職したが、格闘ゲームへの熱は冷めなかった。

1日で198連勝

 地元では敵がいなくなったため、対戦相手を求めて全国のゲームセンターを転戦した。高校時代、ヴァンパイアシリーズ第2弾「ヴァンパイアハンター」では1日で198連勝を記録。ヴァンパイアシリーズを含めた格闘技ゲーム大会の通算優勝は「少なくとも20回以上」を数える。

 「ゲームが娯楽から勝負事になった。負けたら自分の人生が否定されたと思うほど悔しかった」。平井さんはゲーマー時代をこう振り返る。

 負けず嫌いの性格も手伝い、勝つための努力を惜しまなかった。自前のコントローラーを改造し、ボタンの連打やレバーを激しく動かしても操作が安定するようコントローラー内部に重りを入れたりした。

父と同じ道に

 転機は25歳。岐阜県警の警察官だった父の勧めもあり、同じ道に進むことを決意し、2005年に警察官になった。

 「もうゲームに100%の体力と時間をつぎこめない」。ゲームの世界からの引退を決め、警察官になる前、最後の大会にと臨んだ04年のストリートファイターの全国大会で優勝した。未練はなかった。

 交番勤務、生活安全やサイバー犯罪対策部門などを経て、現在は県警本部情報管理課の先端技術導入推進係として警察業務のデジタル・効率化を進めている。

 「ゲームでは、相手がこう動いたら、こう対処するという受け身ではダメ。相手を知り、思い通りにさせないよう自分から動く」。ゲーマーとして培ったこの心構えは警察官になっても変わらない。

eスポーツ同好会で職場交流

 警察官を辞めるまでゲームはしないつもりだったが、かつて競い合った仲間たちがプロのゲーマーになったり、今も全国大会で活躍したりする姿を見て心がざわついた。

 ただ、ゲーマー時代のような闘争心は今はない。純粋に「いろんな人とゲームを楽しみたい」という気持ちで昨年12月、岐阜県警内にゲームをスポーツ競技と捉えて楽しむ「eスポーツ同好会」を発足させた。

 自身が会長となり、所属も階級もばらばらのゲーム好きの20~50代の27人が月1~2回会場を借りて、格闘技やシューティングなどの家庭用ゲームソフトを持ち寄って交流している。

 会員からは「同じ趣味を通して接することで、世代を超えて親近感を持つことができる。仕事上でも情報共有しやすくなった」といった声が上がるなど評判は上々だ。

 かつて誰にも負けたくないと目をギラつかせていたレジェンドプレーヤーは今、新たな目標を見つけて再びゲームと向き合う。

 「ゲームは年齢、性別に関係なくプレーできる最高のコミュニケーションツール。自分の経験を生かし、風通しの良い、働きやすい職場作りにつなげていきたい」【黒詰拓也】

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.