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いじめられるほうも悪い?自己責任論の背景と心のケア


 いじめ問題が報じられる度に、気になることがある。SNS(ネット交流サービス)で散見する「いじめられる方も(が)悪い」という主張だ。被害者をさらに傷つけかねない自己責任論はなぜ繰り返されるのか。子どもたちの心のケアはどうすべきなのか。いじめ問題を分析する東京学芸大学の教授(教育心理学)で、付属小学校の校長を兼務する杉森伸吉さん(58)に話を聞いた。【聞き手・山本萌】

 ――若い世代のいじめにはどのような特徴がありますか。

 ◆多くの子どもたちがスマートフォンでSNSを利用しています。リアルな社会と「地続き」であるネット社会でいじめが発生しやすいのです。例えば、SNSでグループから外す、恥ずかしい画像を作ったり送ったりする。いじめの対象者になりすまして変な言動をする。親世代とは異なり、SNSのあらゆる機能を「いじめ」として使うことが可能で、大人の監視は行き届きにくい。その結果、子どもが追い詰められるリスクが高くなるのです。

 アニメ「ドラえもん」の登場人物に例えてみましょう。

 <のび太がジャイアンにけんかで勝つ>

 <のび太がスネ夫やしずかちゃんになりすましてジャイアンにいじわるをする>

 こうしたことが可能になります。リアルな社会で人間関係をしっかりと構築する必要性がより高まっていると感じます。

いじめの原因「無意識の加害者」も

 ――どうしていじめが起きるのでしょうか。

 ◆理由はさまざまです。相手を意図的にではなく、知らず知らずのうちに傷つけている場合もあります。すると、被害者側は、嫌な行為が続くとやり返してしまう。だが、やり返された方は「向こうから攻撃してきた」と解釈する。加害者から被害者への一方的な行為ではなく、お互い何かしら攻撃しているが、一方は自覚はない。このような状態を「相互いじめ」と呼んでいます。他にも、いじめている子どもが中学受験の勉強で大きなストレスを抱えて、その発散のために相手を傷つけてしまうなど、さまざまなケースが考えられます。

 ――いじめ問題が報道されると、SNSでは「いじめられる方も(が)悪い」という声が必ず出てきます。

 ◆1980年代ごろは「いじめられる方が悪い」という世論が主流でした。背景には、日本の文化が考えられます。欧米のように個人主義が優勢な社会は、他人からどう思われるかより自分がどう思うかを大事にします。

 一方、日本は言葉を使わず、以心伝心で伝えるといった「空気を読む」文化があります。個人主義よりも集団主義よりの考え方ですね。周囲からどのように思われるかを重視するので、いじめの被害者は「空気を読むのに失敗している」として、責任の一端があると見なされたのです。

 いじめを原因とした自殺が明るみに出るようになり、その被害実態から「いじめる方が悪い」という風潮が広がり始めました。ですが、従来の日本の文化に影響されている人がいまも少なくないのでしょう。

 ――6年前から小学校の校長を兼任されています。どのようにいじめ防止に取り組まれていますか。

 ◆「バカ」「死ね」といった乱暴な言葉を使わず「きれいな言葉を使おう」という目標を掲げています。きれいな言葉でいじめる人はまずいません。

 周囲に気を配る能力も大切です。通学時の電車やバスで他の乗客にランドセルがぶつかっていないか、友達と大きな声で話して迷惑になっていないか。自分の言動が周りにどういう影響を与えるかを考えてもらいます。きれいな言葉を使い、互いに目配りし合って過ごすことがいじめ予防につながります。

 一方で、嫌なことに遭遇せずに生きてはいけません。自分に対する否定的な現実を感じた時に、どうすれば子どもたちがよりしなやかに、より幸せに生きていけるか。その力を身につけられる教育も必要だと考えています。

「小さな気づき」で信頼関係構築を

 ――周囲の大人はどのようなことに心配りをすればよいでしょうか。

 ◆単にその時の行動だけを見るのではなく背景に何があるかを見極めることが必要です。成績が落ちた時に、その変化だけを叱ると「本当はいじめられているから勉強に集中できなかった」という理由が隠れていることがあります。

 学校で嫌な出来事があり、ネガティブな気持ちになったまま長期休みに入ると、家庭というシェルターにいる時はいいですが、その間に「嫌な気持ち」はどんどん膨らみ、休み明けの登校が大きなハードルになってしまいます。長期休み明けに自殺が増える傾向にあるのは、そのような状況があるからでしょう。大人は子どもたちをよく見て、対処方法を考えなければなりません。

 ――いま、いじめに悩んでいる子どもたちにメッセージをお願いします。

 ◆思春期は心が不安定になりやすいです。そんなときは、自分の良いところをたくさん紙に書き出してください。自分の脳に前向きな気持ちをインプットするのも効果的です。

 みなさんのSOSに、周囲の大人が気付かないことは多々あります。反抗や悪態といったSOSの場合は大人が攻撃だと受け止めてしまったり、「たいしたことない」と考えて対処しなかったりするケースです。

 「相談すると面倒なことになる」と親にも友人にも相談できずに深刻化したケースも報告されています。「困ったら親身になってくれる」と信じられる大人との関係性を普段から構築しましょう。まずは自分がしんどいことを自覚し、恥ずかしがらずに誰かに相談して一人で解決しようとしないでください。

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