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コロナ5類移行で行政支援縮小「対応できるか?」高齢者施設に危機感


 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが8日、「2類相当」から5類に引き下げられ、社会の「警戒ムード」が緩む一方、危機感を強めているのが高齢者施設関係者だ。日々、入居者と接する訪問医は「行政の医療支援が縮小される中、再び感染が拡大すれば、対応できるのか」と危惧する。

 「ご飯、食べられるようになった?」。4月中旬、大阪府柏原市の特別養護老人ホーム「第二好意の庭(コイノニア)」を訪れた「水野クリニック」(大阪府河内長野市)の水野宅郎医師(45)が声をかけると、ベッドに横たわっていた女性が表情を和らげ少しうなずいた。女性は新型コロナに感染してから食欲が戻らないという。

 この施設では、4月初旬に4階の入居者約30人のうち20人が感染するクラスター(感染者集団)が発生。水野医師らは直後から訪問診療し、治療薬の投与などを続けてきた。「オミクロン型が主流のいまはコロナによる肺炎で亡くなる人は少ないが、感染によって食べられなくなり、寝たきりになって衰弱する人が多い」と説明する。

 コロナ禍の高齢者施設ではクラスターの発生が続出し、入居者が陽性になっても医療機関から入院を断られるケースが相次いだ。このため大阪府は2022年2月、「重点往診チーム」を新設し、医師らを高齢者施設に派遣する取り組みを始めた。23年3月時点で府内の14医療機関が参加しており、水野クリニックもその一つだ。

 第二好意の庭では、クラスター発生を確認した日の昼ごろ、施設が保健所に連絡すると、夜には連絡を受けた水野医師らが、PCR検査やレントゲンの機器、治療薬などを車に積んで往診に訪れた。陽性になった20人は、感染初期に受診できたこともあり全員が快方に向かっているという。施設長の阿瀬学さん(48)は「まるで施設の中に病院ができたような感覚。医師がすぐに来てくれるのは職員にとって安心材料だ」と話す。

クラスター収束に2カ月

 この施設では、府の重点往診チーム設置前の22年1月末にもクラスターが発生している。当時は、感染者が急増した「第6波」のまっただ中で、病床が逼迫(ひっぱく)。保健所への電話が、なかなかつながらなかった。救急車が来ても搬送先の医療機関が見つからず、そのまま引き返してしまったケースもあった。職員にも感染が広がり、夜勤の人員確保に苦労したという。クラスターの収束までには約2カ月を要した。

 2類相当から5類への移行に伴い、府は重点往診チームを終了する。訪問診療は特別な理由がない限り、医療機関と訪問先が16キロ以内と定められており、府の担当者は「今後は地域の医療機関で対応してもらうことになる」と説明する。

 水野医師は「どれだけ感染対策をしてもクラスターは止められない。5類移行後は今のような訪問診療は無理なので、困る施設は増えるだろう」と指摘する。

 阿瀬さんは「社会が普段通りに動き出すのは賛成だが、職員の感染リスクが高まるので、我々は逆に感染対策を強めないといけなくなる」と考えている。続けて「我々自身で、同じような往診の体制を築くのは難しいと思う。(第6波の頃のような)昔に戻ってしまうのではないかと懸念している」と不安を口にした。【柳楽未来】

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