北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）朝鮮労働党総書記の妹、金与正（キム・ヨジョン）党副部長は28日、米国が核や通常戦力などで韓国を防衛する「拡大抑止」の強化を盛り込んだ、米韓両国の「ワシントン宣言」を強く批判し、「より強力な力の実体に直面することになるだろう」と対抗措置を示唆した。米韓両首脳のことも強い言葉で批判した。北朝鮮国営の朝鮮中央通信が29日に報じた。
ワシントン宣言は、26日の米韓首脳会談で採択され、北朝鮮の核脅威に米韓が揺らぐことなく対応する姿勢を示していた。北朝鮮が宣言に反応を示したのはこれが初めてだ。
金与正氏は、韓国の尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領を「南朝鮮大統領 尹錫悦」と呼び捨てにしたうえで、ワシントン宣言を「最も敵対的で、侵略的な行動意志が反映された極悪な対朝鮮敵視政策の集約化された産物」と規定。「北東アジア地域と世界の平和と安全をより厳しい危険にさらす結果をもたらすことになる本当に歓迎されない行為だ」と批判した。
バイデン米大統領は26日の首脳会談後の共同記者会見で、「北朝鮮による米国や同盟国への核攻撃は受け入れられない。そのような行動をとれば、（北朝鮮の）政権の終わりを意味するだろう」と強く警告した。これに対しても金与正氏は「米国の安全と将来に対して、全く責任を持たず、自らの残りの任期2年のみを耐えるのも負担になる未来がない老いぼれの妄言」と80歳のバイデン氏を挑発。「われわれが容易に見逃せない、あまりにも途方もない余波を覚悟すべき修辞学的威嚇だ」と強く反発した。
さらに金与正氏は「われわれは、核戦争抑止力の向上と、特には抑止力の第二の任務にさらに完璧であるべきだという事実を改めて確信した」とも述べた。「第二の任務」との表現で、核兵器を先制攻撃などにも使用できると示唆することで、米韓両国を強くけん制したとみられる。【ソウル坂口裕彦】
