医師の古川聡・宇宙飛行士（59）が研究代表者を務めた医学研究にデータの捏造（ねつぞう）や改ざんなどがあった問題で、宇宙航空研究開発機構（JAXA）は28日、東京都内で記者会見し、国から受けた研究費約7000万円を返還しないと明らかにした。
研究が論文発表されておらず、研究費の返還などを義務づける国のガイドラインの特定不正行為には該当しないためと説明している。
JAXAは2019年以降、宇宙医学研究自体を中止しているが、被験者に負荷をかける研究は当面行わないとした上で、24年度以降に再開する方針も示した。佐々木宏理事は「月や火星まで人類の活動領域が拡大する中、飛行士の健康維持や、医療技術の知見を獲得することは不可欠」と再開の意義を強調したが、研究費の返還もないまま事態の幕引きを図った形だ。1月に戒告の懲戒処分を受けた古川飛行士は23年度、国際宇宙ステーション（ISS）に2回目の長期滞在をする予定だ。
この研究は16～17年、ISSを模した茨城県つくば市の閉鎖施設で一般の被験者40人を対象にストレスを調べた実験。研究者2人が存在しないデータを作成したり、評価をわざと書き換えたりした。【鳥井真平、松本光樹】
